36歳、年収430万円で住宅購入は無謀?無理なく返せる住宅ローンはいくら?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、36歳、会社員の女性。母と祖母との同居を予定しており、住宅の購入を検討している相談者。どの程度の物件なら無理なく購入できるでしょうか? FPの渡邊裕介氏がお答えします。

母と賃貸に2人暮らしです。

祖母と同居するのをきっかけに賃貸を借り換えるか、中古マンションを買うべきかを悩んでいます。祖母は現状、県営住宅に住んでいますが、先々の介護を考え、同居をしたいと言われています。そこで、今私達が住んでいる賃貸では手狭なので引っ越しを考えています。

今の所、私自身の結婚の予定もありませんが、賃料の高い部屋に引っ越しをして、いざ私が家を出た時の事を考えると、母の年齢や収入では、借り換えも難しいのではないかと思ってしまいます。そこで、このタイミングで中古マンションを購入するというのは、無計画でしょうか? また、私の年収(430万円)では、どの程度の物件なら無理なく購入できるでしょうか?

【プロフィール】

・女性、36歳、会社員、独身

・同居家族について:母(62歳、パート、年収140万)

・住居の形態:賃貸(茨城県)

・毎月の手取り金額:30万円(母分含まず)

・年間の手取りボーナス額:66万円(母分含まず)

・毎月の世帯の支出の目安:21万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:5万7,000円

・食費:4万円

・水道光熱費:2万円

・通信費:2万4,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円

・現在の貯蓄総額:210万円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:60万円(車のローン)


渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。祖母や母親と同居する為のマンション購入についてのご相談です。

まず、同居用のマンションを購入することが無計画かどうかについてですが、これは価値観や、ご相談者自身の今後想定するライフプランによります。将来の介護などを想定し、祖母やお母様と一緒に住むことを決断されることは素晴らしいと思います。

今後のライフプランについては、記載にもあるように、今後結婚しない前提で考えるのか、将来的に結婚するかもしれないという前提で考えるかによって変わってくるでしょう。とはいえ、将来のことは分かりませんので、どちらに振れたとしてもある程度対応出来るような選択肢を準備しておくのが重要です。

将来のパターンをいくつか想定しておこう

大きなトラブルさえなければ、ずっと同居をすることも可能ですし、もし心境の変化やご結婚されるなど状況の変化によって、住環境を変える必要が出てきた場合は、高齢である祖母やお母様にそのまま住んでいただき、ご自身が外に出る選択肢を取ることも出来ます。

ただし、ご相談者も懸念しているように、ご自身がそのまま住み、祖母やお母様が将来的に外に出るという場合は、ご高齢のため選択肢も狭まるので注意が必要です。このように、いくつか想定出来るケースを考慮した上で、購入するかの判断をしましょう。

相談者が組めるローンの金額は?

では、購入する場合、ムリなく購入できる妥当な物件価格はどのように考えたら良いでしょうか。まずは、ご年収に対して金融機関が住宅ローンとして貸してくれるであろう金額について考えていきます。

住宅ローンを組む際、年収に対しての返済比率で審査が行われます。一般的には年収に対して、返済比率35%と設定している金融機関が多いです。

年収430万円×35%÷12カ月=12万5,400円

ご相談者の場合、月々12万5,400円程度の返済金額まで貸してもらえる計算になります。

ここで注意が必要なのは、住宅ローンを組む場合、実際に適用される金利とは別に、ローンの審査をするための「審査金利」というものが金融機関ごとに定められている点です。一般的には、審査金利3.5~4%程度に設定されています。

すなわち、現在の変動金利の「適用金利」は0.4~0.5%程度となっていますが、いくら借りることが出来るかは「審査金利」で査定される為、仮に審査金利4%、35年でローンを組むことを考えると、ご相談者の場合は借入金額2,800万円が、金融機関が貸してくれる上限の目安となります。

なお、フラット35の場合は、この「審査金利」が「適用金利」と同じになるため、借入れ可能な金額が増えます。執筆時点でのフラットの金利1.36%と仮定すると、約4,200万円程度の借入れが可能な計算となります。

借りられる額と返済できる額は別!

ただし、これらはあくまで金融機関からの借入れ可能金額ですので、それぞれ借入れした場合に返済可能かどうかはまた違う問題です。先の2パターンをそれぞれで比較した場合、

●借入金額2,800万円・変動金利0.45%・借入期間35年→返済金額7万2,066円/月
●借入金額4,200万円・固定金利1.36%・借入期間35年→返済金額12万5,736円/月

となります。月々の返済でも約5万円程度も差が出る計算となり、生活設計がまったく異なってくることが見て分かると思います。

無理なく返済できる借入額は?

次に、返済可能な金額について考えていきたいと思います。

一般的には、毎月の返済額については、年収に対しての返済比率20~25%程度に抑えたほうがよいとされています。また、定年前に完済する前提で考えたほうが良いでしょう。もし65歳まで働くと仮定すると、約30年間となります。ローンを組む場合は35年で組んでも構いません。

ご相談者の場合、年収430万円×20%~25%÷12カ月=7万1,600円~8万9,500円となります。これらから逆算すると、

●借入金額2,500万円・変動金利0.45%・借入期間30年→返済金額7万4,250円/月
●借入金額2,600万円・固定金利1.36%・借入期間30年→返済金額8万7,995円/月

となるので、約2,500万円程度の借入れに抑えられると、将来に向けての生活設計がしやすくなると思われます。

老後資金などの確保も忘れずに

なお、若干の車のローンが残っていますが、住宅ローンの審査にも影響しますので、住宅ローン審査の前に完済してしまいましょう。金利も車のローンの方が高い為、もったいないです。

今回は、一般的な返済比率をベースに考えてみましたが、個々によって生活に掛かる費用は様々です。また、長期的に住むことを考えると、費用的な問題だけでなく、ご家族と同居する生活スタイルも考慮する必要があります。住宅購入だけでなく、老後資金準備や将来的な医療費など保障や貯蓄を確保した上での生活設計を考えていきましょう。

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