「魔女の秘密展」 書物や拷問道具など紹介

 ドイツやオーストリアなど欧州各地の博物館、美術館から、魔女裁判に関する書物や実際に使われた拷問道具、魔女を扱った絵画など約100点を集めて紹介する「魔女の秘密展」。全国に巡回して延べ14万人以上を動員した同展が、東京・原宿のラフォーレミュージアム原宿で開催中だ。

 魔女がどのような状況から生み出されたのか、魔女裁判とはどういうものだったのか、その真実を日本で初めて多角的に紹介する。監修したドイツ文学者の西村佑子は「ドイツでは今もまじめに魔女迫害の歴史に向き合っており、あちこちで魔女に関する展覧会を行っている」と言う。◆迫害の歴史を追う 15世紀から18世紀半ばの欧州で起こった「魔女狩り」は、ペストの流行や小氷河期と呼ばれる天候の悪化など、厳しい社会状況と結びついていた。悪いことは神のせいでも、自分のせいでもない、と人々が安心するためにスケープゴートにされたのが魔女だった。

 市民同士がねたみや恨みから訴え合い、女性ばかりでなく、男性も子どもも告発されたという。魔女はキリスト教の概念である悪魔と結びつき、悪魔と契約していることなどが魔女の定義とされた。さらにグーテンベルクによる印刷技術の発明も影響が大きい。魔女論を本として発行し、ちょっとしたうわさ話を広げて、人々の疑念をあおることになったからだ。

 魔女だと告発された人は魔女裁判にかけられた。自白が唯一の証拠だったため、さまざまな拷問道具が作られた。会場では責め立てる審問官の映像で、こうした裁判の様子を体験できる。

 ドイツでは1775年に行われたのが最後の魔女裁判だとされる。報道内覧会では、編集者で評論家の山田五郎が「決して暗黒の中世の話ではない。ルネサンスも起こっていて、ガリレオ・ガリレイもニュートンも既に登場していた時代だと驚かされる」と話した。

 また、誰かを犠牲にして不満のガス抜きにする様相は、現代のいじめの構図と全く同じだと指摘。「人の心の恐ろしさ、群集心理の残酷さを感じ取ってもらえればと思う」 同展のオフィシャル・アンバサダーを務める声優・歌手の上坂すみれは、魔女をイメージした衣装で登場。「日本のアニメでは魔女はちょっとドジっ子でかわいいイメージ。でも社会の暗部だったことがよく分かる」と来場を呼びかけた。

 13日まで。一般・大学生1200円、中学・高校生1000円、小学生200円。問い合わせはハローダイヤル03(5777)8600。

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