オンラインはタチが悪い|電脳三面記事 ビル・ゲイツの妹(という設定)のライターが、ネットで話題になった事を斬りまくる、人気連載「電脳三面記事」。オンラインサロンとオンライン身の上相談、どちらの方がマシでしょう?

オンラインサロンから得られるものは……

母校で後輩と戯れたとき、もう二度とやるまいと思いました。なんだかんだいって若者はチョロい

こちらにちょっと社会経験があるというだけで、盲目的に崇めてくる。もちろんそうじゃないタイプもいるはずだけど、盲信しそうなタイプばかりが先輩との交流を過剰に求めるのに対し、そういうタイプはお戯れの場に出てこない。

だから、己の万能感を増したいタイプの人は、無知で自分に好意的な若者たちから頼られるというこの味を知ったら、中毒になるだろうなと感じました

クローズアップ現代+が取り上げたこともあって、オンラインサロンが話題になっています。日本語で言えば私塾ですが、本気で人を育てる気がないところが古典的な私塾と異なります。

ほとんどのオンラインサロンは甘言によるやりがい詐欺のブラックサロンで、捕まってないだけの詐欺と言われた主宰もいるように、本来なら対価を払って人に頼まなくてはならないことも体験できる権利として売ってしまうという守銭奴システム

その体験で得られるものは「あんなところで金を払って体験した」という事実だけ。

低賃金で修業する料理人のように、次の店を紹介してもらったり暖簾をわけてもらったりという、リーズナブルなリターンはない。

それでも体験したいのは主宰を盲信しているからで、主宰の側は盲信される中毒に陥っています。ゆえに、互いにこの仕組みから逃げ出すのは難しいのでしょう。

相談ごとにも、同じような構図があります。相談する側は相談される側を頼っていて、そのことが相談される側を酔わせます。それが公開の場であればなおのこと。「そうきたか」と賞賛されるような回答をしたいという欲が湧いてきます。

甘露を味わいたいがために手に余る質問にも無理に答えようとして、オーディエンスから集中砲火をくらうこともあります。

有料だから妄信する面も

回答者自身の言動もコンテンツ

ここで意味の無い比較をしてみます。

身ぐるみ剥ぐ系のオンラインサロンと、身の丈を超えたオンライン身の上相談、どちらがマシでしょうか

どっちも嫌いですが、でも、オンラインサロンのほうが僅差でマシだと思うんですよ。なぜなら、そもそも胡散臭くて被害者の数が限られるから。あとはほぼ同じ。

オンラインサロンの盲信者は盲信ぶりをSNSなどで公表させられて他人においしく消費されるコンテンツになり、身の上相談する人も、回答が欲しいあまりにコンテンツとなることを引き受けます。

そして、回答者の肩を持つつもりはありませんが、回答者自身の言動もまたコンテンツです

本人が全焼しても、掲載媒体にしてみれば一部のボヤ。その自覚と責任が、掲載媒体にも必要です。ここもオンラインサロンよりタチが悪い。

オンラインサロンの運営側は、養分側のことをなんとも思っていない自覚的搾取者だけれど、オンライン身の上相談は場の提供者も回答者も、他人の悩みをビューの稼げるコンテンツとして消費しているという自覚に欠けたまま酔っている

他人の相談に乗るというのは本当はとても難しいこと。評判がいいわけではないいのちの電話の相談員だって、研修受けてますよ。

私といたしましては、うっかりそのような場には近づかぬように用心しつつ、いま現在、オンライン身の上相談を手がける方々が、母校の親睦会のような、自分がコンテンツ化されることに不用心な人々の集うブルーオーシャンにこぞって出張って行かれませんよう、願うばかりです。

蛭 芸子(ビル・ゲイコ)
NHK―BSの『国際報道2021』は海外の政府に厳しい視線を向けてる印象なんだけど、老眼鏡をかけた方がいいと思う。

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