木星の衛星エウロパの海底で今も火山活動? 生命の期待も

【▲ 木星の衛星エウロパを観測する探査機「エウロパ・クリッパー」を描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

カレル大学(チェコ共和国)のMarie Běhounková氏らの研究グループは、木星の衛星「エウロパ」の表面下にあると予想される海(内部海)において、比較的最近まで、あるいは現在も海底火山活動が起きている可能性を示した研究成果を発表しました。エウロパを観測する探査機「エウロパ・クリッパー」の2024年打ち上げを目標に掲げるアメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)が、その内容を紹介しています。

■エウロパの火山活動は「潮汐加熱」によって長期間支えてきた可能性

エウロパは17世紀にガリレオ・ガリレイが発見した「ガリレオ衛星」と呼ばれる4つの衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)のひとつです。エウロパの表面は氷に覆われていますが、「ハッブル」宇宙望遠鏡などの観測によって、表面から水を吹き出す間欠泉が見つかっています。氷の外殻とその内側にある岩石層の間には、間欠泉から吹き出す水の源となっている広大な内部海が存在すると考えられており、内部海では生命が誕生している可能性も指摘されています。

分厚い氷に太陽光がさえぎられてしまうエウロパの内部海で生命が利用できるエネルギーの供給源として考えられているのが、火山活動などによって温められた高温の水を海底から吹き出す熱水噴出孔です。熱水噴出孔はこれまでに地球の海底で見つかっていて、太陽光が届かない環境で化学エネルギーを利用する生態系を支える役割を果たしていることが知られています。

もしもエウロパの海底で火山活動が起きているとすれば、その熱源は「潮汐加熱」であることが考えられます。潮汐加熱とは、別の天体の重力がもたらす潮汐力によって天体の内部が変形し、加熱される現象のこと。エウロパの内側を周回する衛星「イオ」では木星や他の衛星との相互作用による潮汐加熱の影響が顕著で、ガスや塵を最大400kmの高さまで噴出させるという噴火の様子は探査機だけでなく地上の望遠鏡からも観測されています。エウロパの内部も潮汐加熱によって加熱され、火山活動が引き起こされている可能性があるのです。[()

▲潮汐力によってエウロパが変形する様子を強調して示した動画▲
(Credit: NASA/JPL)

今回、研究グループは3次元数値モデルを使用して、潮汐加熱がエウロパの内部に及ぼす影響を詳細に分析しました。その結果、内部が冷えるにつれて徐々に弱まりはするものの、エウロパの数十億年に渡る歴史の大半において火山活動が維持された可能性があり、特に最も熱が生み出される両極域に活動が集中する可能性が高いことが示されたといいます。火山活動が長期間継続した可能性があるということは、生命の誕生に適した環境もまた長い期間に渡って維持されてきた可能性が考えられます。

NASAが開発を進めているエウロパ・クリッパーは2030年に木星へ到着する予定です。探査機は木星を周回しつつエウロパに少なくとも45回接近し、最も接近する際には高度25kmから観測を行うことが計画されています。エウロパ・クリッパーのプロジェクトサイエンティストを務めるJPLのRobert Pappalardo氏は、エウロパの内部海が海底の火山活動によって生命の居住可能な環境になる可能性があり、エウロパ・クリッパーの観測によってそのことを検証できるかもしれないと展望を語っています。

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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