北朝鮮で凶悪「幼児誘拐」多発…コロナ禍で社会不安

コロナ鎖国による経済難、物資不足で犯罪が多発している北朝鮮。

食べ物のみならず、稲の苗床、コロナ防疫用の消毒車の部品など、輸入がストップしたことで不足している品物を中心に盗難のターゲットになっているが、凶悪事件も起きている。北部の両江道(リャンガンド)では、子どもの誘拐事件が多発していると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えている。

先月12日に、恵山(ヘサン)市内の江岸(カンアン)幼稚園に通う6歳の子どもが誘拐された。幼稚園に現れた男性は、「自分の子どもだ、今は離婚した母親と2人で暮らしているが顔を見たくてやって来た」と告げて、子どもを連れ去った。

その後、母親のもとに届いたのは中国元で5000元(約8万6千円)もの身代金の要求だった。母親は安全部(警察署)に通報し、8時間後に子どもを取り返せたものの、犯人は逃走したという。安全部は、社会不安を煽る深刻な問題として、幼稚園の教師らの証言をもとに聞き込み捜査を行っているとのことだ。

一方、24日には三水(サムス)郡の三水邑幼稚園に通う5歳の子どもが誘拐されたが、容疑者は2日後に恵山駅で、住民の通報により逮捕された。容疑者は取り調べに対し、遠く離れた咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)まで連れて行ってから、両親に脅迫電話をかけ身代金を脅し取るつもりだったと自白した。

同様の誘拐事件は、昨年2月に咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)でも起きている。40代の労働者の兄弟が、食べ物欲しさに市党(朝鮮労働党清津市委員会)の幹部の息子を誘拐し、身代金を要求したというものだ。

相次いで発生した誘拐事件で住民の不安が高まっている。中でも子を持つ親の間では「明日は我が身」だと懸念の声が上がっている。

事件の続発を受けて、安全部は捜査に力を入れているようだが、もともと北朝鮮の治安機関は犯罪を防いで国民の生命と安全を守ることより、体制の維持を図ることに重点が置かれている。また、犯罪を犯したとしても、ワイロ次第でいくらでももみ消すことができる。さらに、犯罪を見かけたとしてもヘタに通報をすると通報者が容疑者扱いされかねず、犯罪被害者家族に捜査費用の支払いを要求するといった事例すらある。

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