「ありがタイ」 刺し身パックにメッセージ 感謝の気持ち、熊本弁丸出しで

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佐藤元気さんが刺し身のパックに書いたメッセージ。「ありがタイ」「のみすぎはでけん」など感謝と愛情がこもった言葉が並ぶ
手書きのメッセージを添えた商品を物産館に卸す佐藤元気さん=熊本市

 熊日の「SNSこちら編集局」(S編)に「鮮魚店が熊本弁のメッセージや、イラストを手書きで書いていて和みます」との声が寄せられた。どんな思いで書いているのか。鮮魚店を営む男性に話を聞いた。

 熊本市南区城南町の物産館「火の君マルシェ」を訪れた会社員女性(34)=東区=が鮮魚コーナーで見たのは、カンパチの刺し身に「カンパンチ!」。元気が出るメッセージのほかにも「のみすぎはでけん」など購入した人への愛情を感じさせる言葉が並ぶ。女性は「手書きのメッセージがあるなんて珍しい。熊本弁に和みました」と声を弾ませた。

 書いているのは「鮮魚元気[げんき]」代表の佐藤元気[もとき]さん(45)=南区。佐藤さんは移動販売を営んでおり、6年前から刺し身や海鮮丼など毎日計100パックを店頭にも卸している。

 移動販売では、客とのコミュニケーションが醍醐味[だいごみ]。同館に商品を卸すようになって「直接、感謝の気持ちを伝えることができない」と痛感し、全てのパックにメッセージを書くようになった。

 22歳のときに母親を亡くした佐藤さんは「直接感謝の気持ちを伝えることなく亡くなってしまった。親孝行できなかったことを今も悔やんでいる」と話す。

 母が亡くなった当日は久しぶりに実家を訪れていたが、母とけんかして家を飛び出し、1人暮らしの自宅に帰った。30分後、母からの無言電話。異変を感じた佐藤さんがすぐに実家に戻ると、居間で倒れている母を見つけた。母はそのまま、搬送先の病院で亡くなった。

 母と離婚した別居の父は17歳のときにすでに他界。「悲しみは強く、独りぼっちになったような気がした」と振り返る。

 遅刻が多く、高校を中退するなど「悪いことをたくさんしてきた」佐藤さん。母のことで思い出すのは、怒られたり、他人に頭を下げてもらったりしている姿ばかりだ。

 辛い日々を周囲の人に支えられ、ただ懸命に生きてきたという。同じ後悔はしたくないと、両親に伝えられなかった感謝の気持ちを、客に伝えることを大切にする。

 メッセージは熊本弁丸出し。「ありがとうでもいいけど“まうごつありがとう”の方が気持ちが伝わる」。だじゃれなどを織り交ぜ、読んだ人が笑顔になれる内容を心掛け、客からも「毎回楽しみ」と評判だ。

 佐藤さんは「メッセージを書かないとやり切った感じがしない。笑ったり、誰かの励ましになったりすればうれしい」と話した。(鬼束実里、上野史央里)

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