夫の役職定年まであと3年なのに学費はピーク。老後に備えるために今やるべきことは?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、48歳、パートの女性。あと3年で夫が役職定年を迎え、給料は3割減の見込み。一方で2人の息子の学費はピークに達します。老後のために今やるべきことは? FPの横山光昭氏がお答えします。

3年後、夫が役職定年します。役職定年後には退職金を1,000万円ほど受け取れる予定で、その後の給料は3割ほど減る見込みです。60歳で定年ですが、その後は65歳まで再雇用で働けることになっています。

二人の息子がいますが、上の子は現在大学2年生、下の子は高校3年生、まだまだ学費がかかります。なんとかなる気もしますが、資産が減ることで老後資金が足りるかどうか心配です。

投資にも興味はありますが、ネット証券で以前、損失を出したことがあり、不安です。ネット証券自体のセキュリティも、どうなのかと思っています。

収支については、アプリで支出のみ管理しています。引き落としは口座で管理。全体的に把握はできていると思います。

【相談者プロフィール】

・女性、48歳、パート

・夫(52歳 会社員)、長男(20歳・大学2年)、次男(18歳・高校3年)

・手取り収入:相談者月収8万2,000円、夫月収42万1,000円・年間ボーナス約150万円

・貯金:夫1,200万円、妻600万円

・毎月の支出の目安:50万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費(住宅ローン):15万1,000円

・食費:7万5,000円

・水道光熱費:2万8,000円

・通信費:2万6,000円

・生命保険料:3万5,000円(学資1万円含む)

・日用品代:8,000円

・医療費:1万8,000円

・教育費(子ども関連費):3万2,000 円

・自動車関連費:1万5,000 円

・交通費:8,000円

・被服費:1万円

・交際費:5,000円

・娯楽費:7,000円

・こづかい:3万円

・その他:5万2,000円


横山:これから夫が役職定年して給料が下がる見込みなのですね。現状で収支はトントンといえる状況ですから、支出を圧縮しておかないと赤字家計の期間が長くなってしまいます。そうなると老後資金も不安な状態になるでしょうから、今のうちにしっかり見直しておきたいものです。

夫の役職定年までに支出を整える

夫の役職定年まではあと3年とのこと。その時には長男は大学を卒業し、次男はあと1年大学生活を残した状態です。いわばこの3年が、大学生2人分の学費がかかりますし、一番お金のかかる時期ともいえます。この時期を乗り越えた時に「貯金が減りすぎた」「毎月の支出が大きすぎて困る」という事態にならないように、支出を整えておきましょう。

ご相談者はアプリと口座の通帳で支出を管理しているということでしたが、支出を単に見ているだけで終わってはいないでしょうか。収入の中で何とか納まることが目標ではなく、3年後の収入減に備え、ムダ支出を減らすための振り返りができなくてはいけません。

家計状況を拝見すると、全体的に支出が大きいメタボ家計の傾向があると感じます。支出にメリハリをつけるためにも、必要な支出を残しつつ、さほど必要ではない支出を減らし、収入減に備えていきましょう。今のままでは3年後、毎月13万円もの赤字となり、ボーナスでも補てんしきれない状態となる可能性が高いでしょう。

老後の見通しはどうか

もう一つ考えておきたいのは「年金生活に入った後の家計」です。恐らく長く働かれることと思いますが、もし、年金だけでの生活になれば、今のままではかなりの金額が赤字になると思われます。住宅ローンや子ども関連費がなくなっても、32万円近い生活費が必要となる可能性があるのです。

たとえお二人で年金が23万円ほど受け取れるとなっても、そこから社会保険料など引かれますから、手取りにすると20~21万円です。ということは、毎月10万円ほどの赤字が出てしまう可能性があるのです。10万円も赤字になってしまえば、10年で1,200万円の貯蓄を生活費として切り崩すこととなります。老後は自然に生活費はかからなくなるとおっしゃる方がいますが、実際はそんなことはありません。お金をかける習慣ができてしまえば、それは改善しようと思わない限りずっと継続してしまうのです。

生活費補てんの蓄え以外にも1000万は用意したい

老後に必要なのは、生活費の補てんとしての蓄えだけではありません。医療費がかかったり、介護が必要になったり、住宅の老朽化や介護状況によるリフォームなどが必要になるかもしれません。そう考えれば、少なくとも生活費の補てんの蓄え以外に1,000万円は準備しておきたいものです。

最終的にはいつまで生きられるかにより、老後資金はいくら必要かが変わるのですが、現状のままでは不足する可能性が高いと言えます。家計には急に変えられない部分もありますから、今のうちから、徐々に支出をダウンサイジングすること、貯えを増やすことを考えていきましょう。

老後資金の置き場を検討しておこう

3年後には退職金が支給されるようです。また、現在はご夫婦で1,800万円近いお金を貯金のみで持っています。しばらく使わないお金でしょうし、預金金利が低い状態が続いていますから、長期間そのまま置いておくのはもったいなく思います。できれば、個別株などではなく投資信託などへの投資をし、預金金利より高い利回りで運用できることを目指してほしいと思います。

運用するならインデックスファンドがおすすめ

ご相談者は一度投資で損をされたということですから、投資には抵抗があるかもしれません。ですが、当時された投資は、1つの会社に投資をする個別株への投資だったり、FXのような為替レートの変動を利用した差益を目的とした投資ではなかったでしょうか。これらは投資の中でもリスク(不確実性)の高いものです。

このような投資ではなく、1つの商品で数百、数千の銘柄に投資ができる投資信託への投資を検討してみましょう。1つの銘柄で分散投資ができますし、日経平均やTOPIX、海外で言えば代平均などの株価の指標に連動することを目指している「インデックスファンド」への投資であれば、価格の動きもわかりやすいですし、ゆっくりですが成長することも期待できます。

金融庁のデータでは、20年ほど継続すると、2~6%の利回りで運用できている人が多いと出ています。ですから、そういった商品への積立投資ができるつみたてNISAなどの非課税制度を利用した投資も検討する価値があると思います。

今ではセキュリティもしっかりしていますし、万が一トラブルがあってもきちんと対応してくれます。ネット証券も悪くはないと思いますので、警戒しすぎず、検討してみてください。

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