「1匹から確実に幸せに」 大村で野良猫の愛護活動 高2の伊藤恵梨さん

リサーチ中に出合ったネコを観察する伊藤さん=大村市内

 創成館高(諫早市)2年で大村市の伊藤恵梨さん(16)が、野良猫の殺処分増加を防ぐ「TNR活動」に同市で取り組もうと準備を進めている。学校行事をきっかけに、自分にできることをしたいと一念発起。活動の開始に向けた野良猫の生息調査などを始めた。「1匹から確実に幸せにしたい」と前を見据える。

  スマホ片手に

 4月下旬の午後。大村市内の住宅街を、地図とスマートフォンを手に進む伊藤さんの姿があった。車の下や家と家との隙間をのぞき込み、ネコを見つけると、そっと近づいてスマホで撮影。地図上に場所や時間を書き込んでいく。「同じ場所でも、日や時間によっているネコが変わるので」。地図上にペンを走らせながら、こう話した。
 一定の地域内の野良猫を捕まえて、不妊・去勢手術後に元の場所に帰すというTNR活動。繁殖を減らし、殺処分や住民の苦情の減少につなげるのが狙いだが、捕獲対象となる全ての野良猫と、その生息状況を把握する事前のリサーチが必要となる。伊藤さんは休日などを利用し、この調査を進めている。
 きっかけは1年生だった3月の学校行事。2年生が、自分で決めた目標に半年間挑戦した結果を報告する時間があった。飲み物を買ったりするお金を使わずにためて、国連児童基金(ユニセフ)へ寄付した―。そんな先輩の話に「誰かのために何もしていない自分が悔しい」と感じた。

  殺処分の現実

 思い付いたのが、自宅周辺の野良猫の多さ。その場で「猫の殺処分をなくす活動がしたい」と決めた。どんな活動をすればいいか調べると、自身が住む町内会で野良猫に関する苦情が問題になっていた。学校生活との両立も考え、TNR活動を思い立った。
 友人らの参加を得て、愛護団体「わんにゃんおたすけ隊」を設立。リサーチに取り組む傍ら、県内の別の動物愛護団体が主催する動物の譲渡会を手伝ったり、多頭飼育崩壊の調査に同行したりしている。「いろんな話を聞き、私たちの活動のやり方を探したい」からだ。
 子猫が優先的に殺処分されること、「嫌い」という理由だけでネコを傷つける人がいること―。活動を始めて、「かわいい」という気持ちだけで見てきた野良猫たちの“現実”に、衝撃を受けた。

  「地道に継続」

「1匹ずつ確実に幸せにしていきたい」と話す伊藤さん=大村市内

 自身の生活にも変化が。人間関係が原因で中学時代に不登校を経験。孤独感が消えず、毎日がつまらなく感じていたが、猫のために動くことが増えてから、その思いが薄らいできた気がする。「自分の活動が成功して幸せに暮らす猫を想像したら、楽しくて」
 周囲の励ましや厳しい指導も「たくさんの人が本気で応援してくれている」との実感につながる。先々は保護動物の里親探しにも取り組みたいという。「つらい思いをしている動物はたくさんいる。遠い道のりだけど、地道に続けたい」と話した。
 わんにゃんおたすけ隊ではボランティアを募集中。ツイッターのアカウントは@wannyan_rescue。メールアドレスはwannyan.otasuketai@gmail.com

◎TNR活動
 野良猫を捕獲(Trap)し、不妊・去勢手術(Neuter)後に元の場所に帰す(Return)活動。特定の地域内で徹底的に行うことで効果が上がりやすい。手術を終えた猫には、目印として耳に小さなV字型のカットを入れる。県内で既に取り組む団体が複数あり、不妊・去勢手術の費用を助成する自治体などもある。

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