2022年度中施行!改正育児・介護休業法が成立~新制度としての男性育休~

日本における少子化が問題視されて久しい状況の中、少子化に歯止めをかけるため国としてもさまざまな法改正や制度の創出をしてきました。
その中で、かねてより問題点の一つとして挙げられ続けてきたジェンダーギャップの解消を図るため、男性の育児休業の取得率を上げるため、また少しでも取得しやすい雰囲気を醸成する手助けとするため、育児・介護休業法の改正が2021年6月3日に成立しました。
現行法下で発生している課題と共に成立した改正法のポイントを確認します。

改正点

以下では、今回成立した改正育児・介護休業法の改正点をご紹介します。

1. 出生時育児休業(2022年10月施行想定)

 「男性版産休」と位置づけられ、生後8週間以内に計4週間の休みを取得可能
 現行法にも男性の育児休業は定められているが、出生時に取得がしやすいように、2回に分けることができ、通常の育児休業申請期限の1か月前ではなく、2週間前の申請で取得できるよう短縮
 急なアポイントや担当業務など、業務が途切れることが問題となりまとまった休みを取得しづらい労働者の状況を考慮し、出生時育児休業取得中のスポット勤務を認められるよう労使合意により可能なように配慮
 育児休業給付金や社会保険料の支払免除により、通常の育児休業制度と同様に実質通常賃金の約8割を保証
 有期雇用労働者の1年以上勤務継続していることを求める取得要件を撤廃し、非正規雇用労働者も取得がしやすくする

2. 産休・育休の取得意向の確認を企業義務化(2022年4月施行)

 企業から労働者に対して産休や育休の取得の意向を確認することを義務化し、現行法では制度等の周知を努力義務のみだった状況下で「制度を知らなかった」「自分が取得できると思わなかった」という知らないことによる取得機会損失を防止
 従業員1,000人超の企業において、育休取得率の公表義務(※2023年4月施行)

改正の背景

日本における少子化は残念ながら加速し続けており、2016年に年間出生数が100万人を下回った後も減少し続け、試算では2021年には80万人を下回るという予想もあります。
また、少子化と合わせ問題となる高齢化により、労働人口は減少の一途を辿っており、国民総活躍社会を目指し女性の活躍支援策や高年齢雇用継続など、国も様々な施策を取っています。
その中でも、女性の就労継続支援として不可欠となるのが、男性の育児参加です。
当然ご家庭ごとに大きな差はあると思われますが、6歳未満の子どものいる日本人男性の育児時間の平均は1時間程度と国際的に見て低い状態です。
世界経済フォーラムでの2021年レポートで公表されたジェンダーギャップ指数(経済・瀬宇治・教育・健康の4分野データから男女間の平等性を数値化)でも、156か国中120位と非常に低い状況で、男性の育児参加が不足することからも、出産をきっかけに育児と仕事の両立ができず離職してしまう女性がまだまだ多いことが大きな問題です。

企業に求められる対応

日本の男性育児参加比率が低い状況が、女性の就業継続の難しさの一因となり、さらには少子化の要因の一つともされています。
企業としても、今後減少する労働人口の中で労働者の確保をしなければならず、まったくの他人事とは言うことはできないと思います。
現状、現行法下で男性の育児休業取得率は2019年度時点で7.48%に留まり、国の掲げる2020年度時点で13%、2025年時点で30%という目標と大きく乖離してしまっています。
今回の改正では、「育休を取れる雰囲気ではなかった」という組織風土や業務の継続性などの心配、雇用条件による取得要件の撤廃など、まずは「男性の育児休業が取りづらい」を改善するため企業への義務化など配慮が見られます。
たった4週間でも、出産直後の大変な時期や、生後8週間までの手探りで不安な時期に男性が育児参加をすることは大きな意味を持つことになると思います。
まずは、法改正を受け社内規定類の見直しを行い、組織に合わせた柔軟な働き方を支援できる制度の構築、そしてその制度への労働者の理解を深めるための周知・啓発を行いましょう。
しかし、男性が育児休業を取得できるようになることだけで本質的な問題は解決しない可能性もあり、さまざまな企業で具体的な取り組みが行われ改善してきているようですが、これまで通り、女性労働者が産休や育休を安心して制度利用し、短時間勤務など柔軟な働き方を叶えられつつ、マミートラックなどに陥ることのなく、育児とキャリア形成を両立できるような組織なジェンダーギャップのないダイバーシティ企業を目指しましょう。

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