読み書きよりも英会話が大事?

子どもの英語教育を考える時、多くの人は「英会話」を思い浮かべると思います。子どもは英語を吸収する能力が高いから、英会話を習わせておけば英語が早く身に付くだろうという考えです。

リーディング力が身につくと「会話力」が向上する

確かに年齢が小さい子どもほど、英語を聞き取る力や正確な発音を身に付ける言語吸収能力が高く、スムーズに英会話を身に付けることができます。しかし子どもの持つ優れた言語能力を「英会話だけ」に使うのはもったいないのです。

私は子どもの言語能力を「リーディング力の育成」に活用すべきであると考え、歌やチャンツを通して英語の読み書き(フォニックス)を学ぶプログラムを構築しました。このプログラムを私の塾で実践したところ、たちまち子どもたちのリーディング力が上達し、それに比例して英語の他の技能(話す、聞く、書く)も向上したのです。

つまりリーディング力が身に付くと英語の全技能が向上するのです。「英会話」をいくら習っても他の技能(リーディング力やライティング力)が向上しないことを考えれば、どちらに重点を置くことが効率的なのかは明白です。

リーディングができると授業についていける

バイリンガル環境で育つ子どもにとってリーディング力の育成は極めて重要です。多少英会話力が弱くても「リーディング」ができれば、現地校の授業についていけるようになるからです。

以下、日本のインターナショナルスクールに子どもを通わせている保護者からいただいたお便りをご紹介します。

「娘がインターナショナルスクールに通い始めて、3カ月経ちました。船津先生のアドバイスのおかげで、家族3人とも迷うことなく、元気に通っております。

クラスで娘だけが英語を話せないというスタートで、生活英語(英会話)では現在も大変に遅れをとっていますが、学習英語は、アドバイス通りフォニックスをみっちり予習していたおかげで、不思議と授業についていけているので、先生や周りの子も、娘を違和感なく受け入れてくれています。

船津先生のカウンセリングを受けていなかったら、本当に迷走して悩んで大変なことになっていたと思います。担任の先生にもクラスの親にももっと遠慮していたと思いますし、娘に対しては、生活英語(英会話)の練習だけをしていたと思います。

全てがあまりに素晴らしいアドバイスなのでご報告させていただきました」(Hさんご夫妻)

リーディングが子どもの自信となる

海外の学校(あるいはインターナショナルスクール)に通う子どもは「英語で」授業を受けなければなりません。先生の英語を聞き取る力や議論で発言する力も重要ですが、それ以前に英語の文字が読めなければ授業についていけません。

海外へ来たばかりの子どもや、英語力が極端に弱い子どもは、毎日学校で「英語」と「勉強」の二つが「できない」経験を繰り返します。日本で優秀だった子どもほど、「できない自分」との間に大きなギャップを感じ、自信が減退していきます。

子どもの自信喪失を食い止める特効薬は「リーディング」なのです。英会話は未熟でも、英語の本が読めるようになれば、授業内容を理解すること、宿題や課題を自力でこなすことができるようになります。

すると「自分はできる」という自信が回復し、気持ちが明るく、前向きになり、友達ができ、学校生活がより楽しく豊かなものに変わっていくのです。

*リーディング力の育て方については拙著「世界で活躍する子の〈英語力の〉育て方 」を参考にしてください。日本人家庭でできるリーディング力指導について解説しています。

船津徹 (ふなつ・とおる)

TLC for Kids代表 教育コンサルタント

1990年明治大学経営学部卒業。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。 しちだ式教材制作に従事。2001年ハワイ州ホノルルにてグローバル教育を行う学習塾TLC for Kidsを開設。 2015年にTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校開設。2017年上海校開設。 アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上のバイリンガルの子どもの教育に携わる。 イエール大学、ペンシルバニア大学など米国のトップ大学への合格者を多数輩出。 著書に「すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。」(ダイヤモンド社)、「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房)。

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