五輪出場を逃したキューバ代表 弱体化の原因と“国外流出”した選手の錚々たる顔ぶれ

キューバ代表のアルフレド・デスパイネ【写真:Getty Images】

米大陸予選で2連敗を喫して早々に敗退が決まったキューバ代表

5月31日(日本時間6月1日)から米フロリダ州で行われている東京五輪アメリカ大陸予選。過去5大会で3度の金メダルを獲得してきたキューバ代表がオープニングラウンドで敗退し、初めて五輪の出場権を逃すことになった。

初戦のベネズエラ戦に5-6で惜敗すると、第2戦のカナダ戦も5-6で敗戦。3日に行われた第3戦のコロンビア戦こそ大勝したが、オープニングラウンド2連敗でスーパーラウンド進出の可能性が消えた。五輪出場のためには、今予選で優勝するか、2位と3位に出場権が与えられる世界最終予選を勝ち抜く必要があり、キューバの東京五輪出場はなくなった。

かつては“アマチュア最強チーム”として栄華を誇ったキューバ代表。1982年から1997年にかけて国際試合公式戦151連勝をマークし、野球が五輪の正式競技となったバルセロナ大会からアトランタ大会、アテネ大会と3大会で優勝。2006年の第1回ワールドベースボールクラシック(WBC)でも準優勝していた。

だが、近年は代表チームの弱体化が顕著となっていた。WBCでは2009年の第2回大会から3大会連続で2次ラウンドで敗退。2019年に行われた「プレミア12」でもオープニングラウンドで姿を消していた。

このキューバ代表の“弱体化”の大きな原因となっているのが、選手たちの“国外流出”だろう。現状、キューバ人選手がメジャーリーグに挑戦するためには亡命するしかない。近年ではソフトバンクに所属していたオスカー・コラス内野手が亡命。この五輪最終予選前にはセサル・プリエト内野手が米国内で突如、失踪している。

キューバ代表に選出されていた中日のライデル・マルティネス(左)とソフトバンクのリバン・モイネロ【写真:荒川祐史、藤浦一都】

昨季MVPのアブレイユや人類最速チャップマンら多くのキューバ出身選手が…

現在、MLBではキューバから亡命したり、移住した選手が数多く活躍したりしている。その主な選手は以下の通りになる。

野手
ホセ・アブレイユ(Wソックス)
ヨルダン・アルバレス(アストロズ)
ランディ・アロザレナ(レイズ)
アドリス・ガルシア(レンジャーズ)
ヤスマニ・グランダル(Wソックス)
ユリエスキ・グリエル(アストロズ)
ルルデス・グリエルJr.(ブルージェイズ)
ホセ・イグレシアス(エンゼルス)
ヨアン・モンカダ(Wソックス)
ルイス・ロベルト(Wソックス)
ジョージ・ソラー(ロイヤルズ)

投手
アロルディス・チャップマン(ヤンキース)
ライセル・イグレシアス(エンゼルス)
ヨアン・ロペス(ブレーブス)

アブレイユはメジャーでも屈指の強打者で2019年、2020年と2年連続で打点王を獲得。昨季はリーグMVPにも輝き、通算209本塁打を放っている。アルバレスは2019年に27本塁打を放った若き大砲。グランダルも通算155本塁打を誇る強打の捕手だ。他にも、元DeNAのグリエル兄弟や、今季レンジャーズでブレイクしている元巨人のガルシア、今季から大谷翔平投手のチームメートとなったイグレシアスや人類最速左腕のチャップマンもキューバ出身だ。

今回の予選にはNPBからソフトバンクのモイネロやデスパイネ、中日のR・マルティネス投手らも参戦していた。彼らは今もキューバ国籍だが、ロッテのマーティンや中日のビシエドももともとはキューバ出身。これらの全ての面々がキューバ代表に顔を揃えたら、と考えると、キューバの底力と弱体化の理由が分かるだろう。(Full-Count編集部)

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