長崎市の時短解除 客喜ぶも店主不安もらす 医療関係者「引き続き警戒を」

女性客の1人は「好きな時間まで飲めるようになるからうれしい」と営業時短要請解除を喜んだ=4日午後6時35分、長崎市船大工町、林田商店

 長崎県県が長崎市内の飲食店などに要請している営業時間短縮要請の解除を発表した4日、歓迎する利用客とは対照的に、店主らはどこまで客足が戻るか見通せず不安げな表情を見せた。田上富久市長や医療関係者は引き続き感染に警戒するよう市民に要望。一方、感染者が急増している佐世保市内の飲食店からは対策強化を求める声が聞かれた。
 「寂しい街が少しは明るくなる」「店で飲むから楽しい」。午後6時ごろ、長崎市銅座町のカラオケ店で70代男性客は声を弾ませた。同6時半ごろ、同市船大工町の焼き鳥店「林田商店」のカウンターでコップを傾けていた女性会社員(54)も「好きな時間まで飲めてうれしい。おしゃべりしてストレス解消」と上機嫌。だが店主の林田修二さん(62)の表情は浮かない。「ここまで減った客足は簡単には戻らないだろう。多くの会社がまだ注意を呼び掛けているだろうし…」。状況を見ながら営業時間を決めるという。
 同市銅座町の宝雲亭本店とり福の店主、井上るりさん(59)も思いは複雑。「誰もが感染を恐れ、ステイホームにも慣れている。全国が収束ムードにならないと、客入りは回復しないのでは」。ただ希望も口にした。「暗いこの繁華街に再び灯がともり、生き生きとした雰囲気が戻ってくれればうれしい」
 長崎みなとメディカルセンター(同市)は4月下旬、1週間足らずで一気に病床が逼迫(ひっぱく)。同センターを含む長崎医療圏で受け入れきれず、別の医療圏に搬送したことも。それだけに、門田淳一院長は「できれば要請解除を1週間ほど延ばしてほしかった。だが飲食店の苦境を考えると致し方ない」と慎重に受け止めた。市内の感染者は激減したが「水面下でくすぶっているという印象。気を緩めると一気に拡大する可能性がある」と警戒。夏休みや五輪で人の移動が増えれば「間を置かずに第5波が襲ってくるかもしれない」。感染力の強いインド由来の変異株にも注意を促した。
 市は休館中の主要観光施設や公民館、運動施設を8日から再開。市主催イベントも順次再開する方針だが、県外からの参加者が多そうな場合は「慎重に判断する」とした。会見した田上市長は市民や事業者に対し「外出や営業の自粛に協力していただいたおかげで収束に向かっている」と感謝。その上で「決して安全宣言をした訳ではない。まだ油断できないと心にとどめ、少しずつ日常を取り戻して」と呼び掛けた。
 「佐世保市も感染者が増える前に緊急事態宣言を出してほしい」。同市中心部で居酒屋を経営する40代女性は不安げに語る。「自分が感染していないか心配しながら接客している」と飲食店対象の緊急PCR検査を歓迎した上で「検査だけで感染を抑えられるのか」と時短や休業の必要性も訴えた。

 


© 株式会社長崎新聞社