【角田裕毅F1第6戦密着】イタリア移住でエンジニアと過ごす時間が増加「スタート段階でモナコより準備が整っている」

 2021年F1第5戦モナコGPの後、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)はそれまで住んでいたイギリス・ミルトンキーンズを離れ、イタリアへ飛んだ。生活の拠点をアルファタウリの本拠地であるファエンツァへ移すためだ。

「モナコGPの土曜日に、(ヘルムート・)マルコさんから(イタリア行きの提案を)聞かされました。最初は少しびっくりでした。ちょうどイギリス内での引っ越しの計画をしていた段階で契約直前だったので、ちょっと面倒くさいなと正直、思ってしまいました。ただ僕は元々シーズン前にイタリアに住みたいと言っていて、チームとの時間も過ごせるし、学べる面でもいいと思っています」

 そう話す角田の表情は、2週間前のモナコGPよりも明るく感じた。

2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

 なぜ、ヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)は、角田にイタリア暮らしを提案したのか。角田は「もう少しエンジニアとの時間を過ごすためにイタリアに移れということになったんだと思います」と説明した。

 レース後のドライバーの生活というのは、人それぞれだ。毎日のようにファクトリーへ行ってエンジニアと話すドライバーもいるが、家族との時間を大切にしたり、自分のなかでオンとオフを切り替えるために、基本的にファクトリーへ行かないというドライバーもいる。

 角田も元々はイタリアに拠点を構えるつもりだったが、ミルトンキーンズにあるシミュレーターに乗るのにイギリスのほうが都合がいいとの理由で、マルコがイギリスでの生活を命じていた。しかし、シミュレーターに乗るのは毎日というわけではなく、不規則だ。それに比べて、チームのファクトリーの近くに住めば、毎日のようにエンジニアに会いに行くこともできる。角田のようにF1の経験が少ないドライバーは、少しでもチームと一緒の時間を過ごすメリットのほうが、シミュレーターに乗るメリットよりも大きいという結論に達したわけだ。

 角田がイギリスを発ったのは、モナコGPから2日後の5月25日(火)。その日からエンジニアとのミーティングを開始した角田は、その後も毎日ファクトリーを訪れ、担当するレースエンジニアとミーティングを重ねた。

 バクー市街地サーキットは、角田にとって第3戦ポルトガルGP、第5戦モナコGPに続いて、今年3度目の初コース。その初日を終えた角田のポジションは10番手。これはポルトガルGPの14番手、モナコGPの20番手を上回る滑り出しだった。

2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

 モータースポーツはエンジニアと共同でマシンをセットアップしていくスポーツ。特にF1はその重要度が高い。

「今までよりは準備の期間が増えたので、すでに(グランプリの)スタートの段階でモナコの時よりは準備が整っていますし、あとはレースの現場でそれらを一緒にくっつけるだけだなと思います」(角田)

 第2戦エミリア・ロマーニャGPから続いていた負のスパイラルから、ようやく抜け出そうとしているアゼルバイジャンGP初日の角田だった。

2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第6戦アゼルバイジャンGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

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