運動中の子どものマスク、着ける?外す? 事故、衛生面…尽きない心配 正しい使い方って?

感染防止のため水泳用マスクを着けて指導するコーチ=鹿児島市の原田学園スイミングスクール(画像の一部を加工しています、同スクール提供)

 「運動時のマスクはどこまで必要?」。小学生の子どもを持つ鹿児島市内の母親から南日本新聞「こちら373」に疑問が寄せられた。子どもを通わせているスイミングスクールでマスク着用が義務づけられ、事故や衛生面が心配と訴える。新型コロナウイルスの感染予防に欠かせないマスクだが、夏場は熱中症の危険性も高まる。現場ではどのような指導が行われているのか探った。

 耐水性のある水泳用マスクを導入するスイミングスクールは増えているという。同市の原田学園スイミングスクールも6月から導入した。人が集まる更衣室やシャワールーム、プールサイドでの着用を想定。コーチは指導中も着用する。丸山杏奈ヘッドコーチは「子どもたちの呼吸の状態をみながら、着用するタイミングは全てコーチが指示するなど安全指導を徹底する」と話す。

 「泳いだ後にマスクを着け、酸欠になったりしないだろうか」。母親はそこも不安だという。新型コロナ感染予防と熱中症に詳しい兵庫医科大学の服部益治特別招聘(しょうへい)教授は「泳ぐ時は着用せず、呼吸が整ってから着けさせるのであれば問題ない」との見解を示す。

 学校現場は、感染予防と熱中症対策の両立に苦慮する。鹿屋市の小学校長は「家族からマスクを外さないように言われ、息苦しくても外さない子どももいる。無理やり外すわけにもいかない」と頭を抱える。鹿児島市の小学校長は「休み時間など教諭の目が届きにくい場面が心配。マスクで表情が分からず、体調の異変にも気づきにくい」と危惧する。

 服部特別招聘教授は「小さな子どもは体調の変化によってマスクを外す判断はできない」としたうえで、「環境省が発表する暑さ指数や運動強度、年齢などを踏まえて、大人が適切に管理することが重要」と強調する。

 同市の済生会鹿児島病院の久保園高明院長は、マスクを着けていると呼吸による体温調節がしにくくなるため、夏場の運動時は着けるべきではないとの立場だ。「あごにずらす外し方だと、マスクを戻す際に付着したウイルスを口元に運んでしまうリスクがある」と注意を促す。「マスクを着脱する前後は、手を洗い、折り畳んで袋などで保管するのが望ましい」と助言する。

 投稿した母親は「マスクが推奨される中、外しにくい雰囲気もある。正しく理解し、安心して使いたい」と望む。

 同市の松原小は、話さなくて済む学習時はマスクを外す時間をつくったり、マスクの適切な着脱法を授業で学ばせたりしている。4日あった2年生の体育の授業では、「かけっこ」を通してマスクの着脱を身に付けさせた。マスクを外し、きれいに折り畳んでポケットにしまってからスタートし、ゴール後にマスクを着ける流れ。指導した矢野芳広教諭(59)は「学校だけでなく、私生活でも正しく使えるようになってほしい」と力を込めた。

外したマスクを折り畳んで、ポケットにしまい込んでから走り出す練習をする児童=鹿児島市の松原小学校

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