お金を増やしたい気持ちは分かるけど…データから見る副業の収入と実態

ここ数年は株式市場が好調なことから株式投資や投資信託を活用した資産運用に興味を持つ人が増えてきましたが、一方で投資をする余力を作るために副業をして収入を増やしたいとの声も聞きます。近年では資産運用と同様に副業を始めた人も増えた印象を受けますが、実際に副業でどのくらい収入が増えているのか、注意すべき点はないのか、データを基に見ていきたいと思います。


実質の手取りが減少

昨年から続いているコロナ禍は日本経済に大きなダメージを与えています。その影響は私たちの家計も直撃しました。厚生労働省が発表している「毎月勤労統計調査」によれば、2020年度の現金給与総額はフルタイム雇用が8年ぶりに前年度比マイナス、パートタイム雇用は4年ぶりにマイナスとなりました。雇用形態の別に関わらず、昨年度は多くの方の収入が下がってしまったことがグラフから分かります。

上図のデータを月次にブレイクダウンすると下図のようになっています。コロナ禍にあたる昨年から今年にかけての動きに注目してください。ちょうど国内での感染が拡大し始めた昨年の2月頃からフルタイム雇用の現金給与総額が大きくマイナスとなっていることが分かります。

この理由は主に2つ考えられます。1つ目は在宅勤務が普及し、残業代が減ったこと。そして、2つ目は度重なる感染拡大に伴い緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出されたことや、感染拡大を防止するために外出が抑制されたことにより、業績の悪化から飲食サービス業や運輸・郵便業の給与が下がったことがあります。

しかし、実態はこのデータ以上に厳しいと考えます。なぜなら、在宅勤務をしているとネット環境があればいつでも仕事ができてしまうため、夜中でもメールの返信をしたり、ウェブ会議をしたりすることもあり、そのような自由な勤務体系だとオフィスで働いている時と比べて正確に残業時間を把握してもらえません。

その結果、実際に働いた時間に対してしっかりと残業代を払ってもらえないケースも多発しており、実質の手取り収入を計算してみるとデータ以上に減ってしまっている人が多いのです。

副業をする人が急増している

コロナ禍によって手取りの収入が減る一方で、在宅勤務の普及により自由な働き方が実現したことで、副業をして収入を増やそうとする人が増えています。クラウドソーシング大手のランサーズが発表した「フリーランス実態調査2020・2021」によれば、2018年から減少傾向だった副業・複業ワーカーの数はこの1年で急増し、800万人を超えています。

このような副業・複業ワーカーを含めたフリーランスの人口は1,670万人と過去最大を記録しており、経済規模も28兆円と1年で約10兆円も増加してこちらも過去最高を更新しています。

同資料ではフリーランスを4つに区分しています。1つは常時雇用されているが、副業としてフリーランスの仕事をこなす「副業系すきまワーカー」で、439万人と全体の26.3%を占めています。多くの人はこのタイプに当てはまるかもしれません。これ以外にも2社以上の企業と契約ベースで仕事をする「複業系パラレルワーカー」、特定の勤務先はないが独立したプロフェッショナルである「自由業系フリーワーカー」、個人事業主・法人経営者で1人で経営をしている「自営業系独立オーナー」がいます。

コロナが追い風となった

手取り収入の減少を副業で賄おうとする人が増えたというデータを見てきましたが、この流れはコロナによって更に加速しました。なぜなら、自由な働き方が普及したことによって、勤務時間や勤務スタイルだけではなく、働く場所の自由度も上がったからです。

東京一極集中という言葉があるように、これまではずっと東京に人が流れ込み続けていましたが、昨年から続くコロナ禍においては東京から人が流出するという珍しい現象が確認されました。総務省が発表している「住民基本台帳人口移動報告」の都道府県別の転入超過数の推移をグラフにしたものが下図です。

緊急事態宣言が延長された昨年の5月以降、6月を除いて今年の2月まで東京から人が流出していることが確認できます。では、東京からどこへ人が流出したのかを見てみると、どうやら近隣の3県(埼玉、千葉、神奈川)に流れていったことが分かります。

わざわざオフィスに行かなくていいのなら、家賃が高い都内には済まず、近隣の件に住んだ方がコストを抑えられると判断した人が多いのでしょう。また、コロナ禍で職を失った人も多いので、それをきっかけに近隣の件に引っ越した人もいるでしょう。

安直に決断するのはやめよう

では、副業はどれぐらい稼ぐことができるのでしょうか。「フリーランス実態調査」によると、さきほど多くの人が当てはまるのではないかとした「副業系すきまワーカー」の平均年収は63.9万円となっています。年収500万円の人からすれば1.5か月分の金額が副収入として入ってくるわけですから、副業をやってみたいと思う人もいるのではないでしょうか?

しかし、注意しなくてはいけません。これまでの連載の中でも書いたことはありますが、平均というのは大きなデータに引っ張られる可能性があり、必ずしも実態を示すわけではありません。そこで内訳を細かく見てみると、「副業系すきまワーカー」の56%、つまり半数以上の年収は10万円以下となっています。

さらに注意しなくてはいけないのは、お金をもらって仕事をする以上、それが本業か副業かは仕事の依頼主からすれば関係がありません。つまり、安直に副業をはじめてしまうと、期待していたよりも稼げなかったのに、ただただ負担だけが増えてしまい、その結果本業における仕事の質が下がってしまうなどもあるわけです。

コロナ禍で収入が減ったからといって、安直に副業を始める前に、その副業が本当に稼げるのか。そして、副業を始めることが本業に悪影響を及ぼさないか。このようなことをしっかりと考えたうえで、副業を始めるかどうかを決めるのがいいでしょう。

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