リモートワーク移住 後押し 長崎市「支援室」設置3年 コロナ禍で制度を拡充

東京から長崎市に移住した山田さんは、自宅に設けた仕事スペースでリモートワークに励む=同市内

 人口の転出者数が転入を上回る「社会減」が全国最多レベルの長崎市が、移住相談や支援の専門部著「移住支援室」を設置して3年目を迎えた。昨年度は過去最多の168世帯344人が関東や福岡から移住し、市は年間200人の目標値の上方修正も検討。新型コロナ禍を受け、転職や創業を伴う移住だけでなく、会社に通勤せず働く「リモートワーク」をする移住者にも支援を拡充して、都市部からのU・Iターン促進に力を入れる。

 ●妻からの提案
 実際にコロナ禍が移住を“後押し”したケースがある。東京出身の会社員、山田海人さん(37)は4月、妻彩さん(43)と小学2年の長男と共に、東京から同市へ移り住んだ。リモートワークができるため転職せず、月に1週間上京し出社する。長崎は彩さんの古里。「もともと長崎への移住は考えていたが、コロナ禍でそのスピードは上がった」
 海人さんの業務は通販会社のデザインやマネジメント業。昨春、在宅勤務が始まり、同僚とのコミュニケーションが取りにくくなった。都内はどこも「密」を避けられず気分転換も難しい。いつしか働くことへの疑問を感じ、ふさぎ込んだ。「長崎に行こう」。見かねた彩さんが提案し、今年1月に移住を決めた。
 長崎暮らしは現在2カ月ほど。長男は地元の祖父母やいとこと毎週会うのを楽しみにし、キャンプが趣味の海人さんも自然が身近な環境は魅力的という。市の移住支援金も活用する予定だ。海人さんは「家族連れの同僚にも、地方移住を考えている人はけっこう多い印象」と話す。

 ●増加を見込む
 市が把握する市内への移住者は▽2016年度75人▽17年度74人▽18年度92人▽19年度292人▽20年度344人。19年度に大きく伸びたのは、同年に「移住支援室」や新たな相談窓口を開設し、相談や支援をしやすい環境が整った効果とみられる。
 市の日本人転出超過(社会減)は18、19年に市町村別で全国ワースト1位だったが、20年は同2位と若干改善。20~24年度の5年間で移住者千人(年間200人)を目標に掲げるが、同室は「結果的に低い目標になっていて、値の修正も検討中」とする。
 市は移住支援制度として東京23区からの転入者に対し2人以上の世帯なら100万円、単身者に60万円を補助。県外からの子育て世帯には35万円を支給する。いずれも昨年度まで転職や創業を伴う移住が支給要件だったが、コロナ禍を受け、本年度(23区対象は2月26日)から移住前の仕事をリモートワークで続ける人も新たに対象とした。
 昨年度はリモートワークを続けながら市内に転入したケースが3世帯あり、同室は「今後も増える」と見込む。市内への移住は40代以下が大半で転職や市内での仕事探しがネックだったが、リモートワークなら給与水準を変えないままでの移住が可能に。同室は「市内への移住の7割はUターンで、『いずれ長崎に帰って親の近くで住みたい』という需要は多い。リモートワークでの移住が、その時期を早める後押しになれば」と期待を寄せる。


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