大蛇&巨大鳥捕獲でわかった日本の飼育モラルの低さ 世界は「エキゾチックアニマル」敬遠

アミメニシキヘビが逃走し大騒動となった

日本は世界から30年以上遅れている! 千葉県などで目撃情報が相次いだ、南アフリカに生息する絶滅危惧種の外来種ミナミジサイチョウが5日、無事に捕獲され、以前飼われていたペットショップに引き取られた。動物ジャーナリストの佐藤栄記氏は「本来は日本に生息しない外来種が逃げ出す例は珍しくない」と指摘する。どうしてそんな事態が起きるのか? 背景にはグローバルスタンダードとはかけ離れた、日本の動物愛護・福祉があるという。

ミナミジサイチョウは千葉県柏市の農地に出没しているとして、テレビ各局のワイドショーが生中継し、注目の的となった。5日に隣の白井市で無事保護されて、茨城県内のペットショップに連れ戻された。

ミナミジサイチョウがペットショップから逃げ出したのは2019年11月。その直後から茨城県や千葉県で目撃情報が相次いだ。鳥の愛好家たちの間では有名な話となった。

それだけにSNSでは「テレビが大騒ぎして慌てて捕獲に乗り出したんだろ?」とペットショップの姿勢を疑う声から、「自然の中でのびのび生きているんだから、そのまま自由にさせてあげて」など、捕獲劇に賛否両論が巻き起こった。

動物ジャーナリストの佐藤栄記氏は「アミメニシキヘビ騒動の直後だったので話題になったが、外来種が逃げ出す例は珍しくない」と指摘する。

「世界的に『外国産の珍しい動物=エキゾチックアニマルを飼うのはやめよう』という流れになっている中、日本の動物愛護・福祉は世界から30年以上遅れている。いまだに多くの野生動物が販売目的で輸入されているが、そうした流れを加速させているのが現在のペットブーム。ただ野生動物なので人慣れせず、結果、飼い切れずに逃がしたり、逃げられてしまう例が後を絶たない」

日本ではペットブームが起こるたびに、多くの外来種が日本の生態系の中に放り込まれる事態が繰り返されてきた。例えばかつての人気アニメ「あらいぐまラスカル」の影響を受け、アライグマがペットとして輸入されたが、飼い切れずに逃がした結果、その多くが野生化して日本に定着。多額の農作物被害を出すばかりか、日本在来種を襲うなど生態系への被害も大きい。こうした問題はほかにも多数ある。

それを知ってか知らずか、SNSなどで珍しい野生動物を“インスタ映え”狙いで公開する著名人もいる。佐藤氏は「こういうのが一番の悪影響。『動物に優しい私』を演出したいのかもしれないが、影響力の大きさから野生動物を飼いたい人の欲求に火をつける」と話す。

動物愛護・福祉を立法の面から考える国会議員の意識もグローバルスタンダードからは程遠そうだ。

先月、横浜市でアミメニシキヘビが逃げた際、超党派の国会議員で構成する「爬虫類・両生類を考える議員連盟」は、爬虫類について「哺乳類や鳥類と比較して『鳴かない』『匂わない』『省スペースでの飼育が可能』で住宅事情に合致し、適切に飼育していれば危険はなく、周辺住民に迷惑をかけるものではない」と声明を発表。だが、佐藤氏は「世界的な流れに逆行し、野生動物を飼うことを奨励してしまっている」と疑問を投げかけた。

現在の日本ではワシントン条約や国内法に違反していなければ、外国産の野生動物を飼育することは可能だ。しかしペット需要によって乱獲され、絶滅の危機に瀕する種も出ている。また今回のミナミジサイチョウや先日のアミメニシキヘビのような“逃走劇”を招いては、動物も人間も、さらには日本の生態系にとっても悲劇となってしまう。

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