長崎市の緊急事態解除 長崎大・泉川教授 「第4波」再拡大を懸念

 新型コロナウイルス感染対策で長崎県が独自に長崎市に発令していた緊急事態宣言は、感染者の減少に伴い7日までで解除された。これを受け長崎大学病院感染制御教育センター長の泉川公一教授は同日、同市内で会見し「第4波は収束していない」として今後再拡大する可能性もあると懸念を示した。ワクチン接種率を「7~8割」まで引き上げて集団免疫を獲得できるよう、接種のスピードを上げる必要性も訴えた。
 県内では感染力が強いとされる英国由来の変異株が広がり、5月上旬のピーク時には感染者が1日60人を超えた。泉川教授は「想定以上の患者が出て、医療が崩壊しかかった」と述べた。同病院にも多数の重症患者が運び込まれ、長崎市を中心とする長崎医療圏の専用病床が不足。「(コロナに感染し)呼吸不全となった患者が市外の病院に搬送されたことは本当にショッキングだった。(コロナとの勝負に)負けた」と悔しさをにじませた。
 同市の緊急事態宣言解除については「市民の感染対策が散漫になると、ぶり返す恐れがある」と指摘。6月に入って、佐世保市の飲食店や北松佐々町の福祉施設でクラスター(感染者集団)が確認されており、「県北の病床が埋まれば、県内全体で支えなければならない」と警戒した。
 今後の見通しについて「油断すれば第5波が来る。(感染者数推移の)山を低く抑えるにはワクチンが武器になる。国民の7割、8割など、あるレベルまで接種率が上がれば集団免疫ができ、感染症から守ることができる」として本県の接種率の低さを問題提起した。県民には、感染リスクの高い会食を控えるなど、油断せず引き続き対策を徹底するよう呼び掛けた。

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