元ハム&燕の今浪隆博氏がスポーツメンタルコーチを目指した訳 「今の僕なら…」

米野智人さん(左)と今浪隆博さんがファンと日本ハム対オリックスをリモート観戦【写真:PLM】

今浪隆博氏と米野智人氏が5月12日の日本ハム対オリックスをファンと“観戦”

元プロ野球選手と一緒にオンライン観戦するイベント「パーソル パ・リーグTV Meetings 2021 第1弾」が5月12日に実施された。コロナ禍の昨シーズンから始まった企画で、2021年シーズンの第1弾ゲストは日本ハムOBで、セ・パ両リーグで活躍した米野智人さんと今浪隆博さん。事前に応募したファンとコミュニケーションを取りながら、日本ハム対オリックスをリモート観戦した。

新型コロナウイルス感染拡大により従来の観戦スタイルが制約される中で、インターネットを活用した新しいファン・エクスペリエンスの実現を目指して始まった同企画。イベントではシスコシステムズ合同会社のWeb会議システムである「Cisco Webex」を活用し、試合を見ながら、2人の軽快なトークや野球に関するクロスワードクイズ、インタラクティブなトークセッション、チャット機能でのコミュニケーションなどでファンとの交流を楽しんだ。

米野さんはパ・リーグの注目の若手を問われ「今日の試合には関係ないけど、ライオンズの若林楽人外野手。足が速くてバッティングも思い切りがいいので、見ていて楽しい。ライオンズは外野手争いが厳しいけれど、頑張ってほしい」と同郷の後輩にエールを送った。若林はその後故障離脱してしまったが、復帰後の活躍が期待される。

今浪さんは日本ハム時代の同僚、近藤健介外野手に注目。「近藤のバッティングコントロールのすごさはNPBで3本の指に入る。一緒にやっていた当時、近藤はバッティングのことばかり考えていた。キャッチャー時代に、どれだけ相手チームに打たれてもベンチに帰ってきたらすぐにバットを握っていましたね」と、古巣のエピソードを披露した。

そんな2人は現役時代の思い出話や技術面に踏み込んだ戦況の解説だけでなく、プライベートの話や引退してからの生活についても赤裸々に語ってくれた。

今浪さんは現役時に甲状腺機能低下症を患い、同時にうつ病を抱えながらプレーした

今浪さんは引退後、企業の軟式チームの監督をする傍ら、スポーツメンタルコーチとして活動している。

「メンタルって言葉ってすごく広くて、他人が感じている『メンタル』とは全然違ったニュアンスがあったりする。そういういろいろな悩みを抱えている方をサポートする仕事をしています。僕は現役の時に甲状腺機能低下症という病気を患ってしまい、同時にうつ病を抱えながらプレーしていたという経験がありました」

さらに「なんとかして負のスパイラルから脱却しなくては」と、メンタルトレーナー、スピリチュアルな人物、神様、色々な人に助けを求めに行った経験を明かした。

「助かりたかったし、プレーに集中したかった。でも僕は、自分を助けてくれる人に出会うことができなかったし、途中からもう疲れてしまって、自分が助かることすら諦めていました。当時、僕のような元プロアスリートのメンタルトレーナーがいたら会いに行っていると思うし、今の僕だったら、サポートすることができたんじゃないかな。メンタルや故障で苦しんでいる人をサポートしてあげたいという思いから、今の仕事をしています」と晴れやかな表情で語ってくれた。

米野智人さんの飲食店オーナー、メットライフドームに出店

一方、米野さんは日本ハムの捕手兼2軍バッテリーコーチ補佐を経て、現在は飲食店のオーナーとして自然食レストランを手がけている。今シーズンからは古巣西武の本拠地であるメットライフドームにヴィーガン料理店「BACKYARD BUTCHERS」をオープンした。

視聴者によるオンライン質問コーナーでは「コロナが落ち着いたらメットライフドームに行きたいのですが、米野さんのお店でおすすめのメニューはありますか?」という質問に、「ありがとうございます! オススメは『ソイチキンサルサボウル』です!」と即答。ファンとの対話に口も滑らかだった。

「基本的には僕もお店に行って、ファンの皆さんと話したり写真を撮ったりしています。ライトスタンドの後方にあるピンク色のお店です。ビジター側なので、ファイターズファンの方に来てもらいやすい場所ですよ」と宣伝する一幕も。

さらに別のファンからは「ファイターズは育成の球団といわれていたけど、最近伸び悩んでいるなあと感じる。コーチ経験のある米野さんから見て、どんなところが課題なのか、プロの目線から教えてほしい」と投げかけられると、米野さんは「難しい質問ですね」と苦笑。

「指導というよりは、本人がいかにどこを目指しているか、どういう選手になりたいのかというのを明確化する。そこに向かって今何をするべきかってことをコツコツとやっていくことがいい選手になる近道。若い選手にはそういう意識をもってやっていってほしいですね」と話した。

また、「指導者としては、選手をそういう気持ちにもっていったり、方向性を示してあげることがいいのかなって思います。どういう言葉で伝えたら理解してもらえるかって考えることが大事」と語り、ファンとの野球談議を楽しんでいた。

「リアルタイムでみんなの声が聞けるのは嬉しい」

試合は日本ハムが1点リードで9回を迎え、守護神の杉浦稔大投手が登板。今浪さんはヤクルト時代の同僚である杉浦について「アウトコースの真っすぐだけでごはんを食べられるピッチャー。後ろで守っていると、実際はありえないことだけどボールが浮き上がって見えるんですよ」と絶賛した。米野さんも「移籍したことで、より合う環境、指導者に出会えましたね」と説明。2人の期待通りに右腕は無失点に抑え、2-1で日本ハムが逃げ切った。

イベントを終えた2人は「あっという間の時間でしたが、みんなと一緒にいい試合を見ることができて楽しかった。リアルタイムでみんなの声が聞こえるのはうれしい。こういうファンとのつながりはいいね」と話し、「まだまだたくさん話すことはあるので、次回また多くの人に参加してほしい!」と呼びかけた。

「パーソル パ・リーグTV Meetings 2021」は今後も続々と開催予定。試合もスペシャルゲストとのコミュニケーションも楽しめる、新しい野球観戦のスタイルを体験してほしい。(「パ・リーグインサイト」本間奈保子)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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