【三浦愛の突撃ドライビング取材/第3回】山下健太選手に聞く、バトルで大事な“気持ち”とタイヤマネジメント

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 2021年もスーパーフォーミュラのピットリポーターを務めるほか、レーシングドライバーとしてスーパー耐久をはじめとしたさまざまなカテゴリーに参戦中の三浦愛さん。今シーズン、オートスポーツwebでは、三浦さんの目線で気になるスーパーフォーミュラドライバーに突撃取材を敢行し、同じドライバー目線で気になることをぐいぐい質問していく企画『三浦愛の突撃ドライビング取材』がスタートしました。

 第3回目の突撃取材のターゲットはKONDO RACINGの山下健太選手。2019年のスーパーGT GT500チャンピオンで、2020年にはWEC世界耐久選手権にも挑戦し、『世界のヤマケン』という愛称でも親しまれている国内トップクラスのドライバーです。

 三浦さんも、かつては全日本F3選手権やフォーミュラ・チャレンジ・ジャパン(FCJ)など、山下選手と同じカテゴリーでの参戦経験がありますが、その中で感じたことについて、どうしても質問したいとのこと。

「山下選手のことはカート時代から知っていますし、F3も一緒に走っていましたけど、タイヤのマネジメントがすごく上手だなと思っていました。レースを見ていてもそうですし、(周囲の)評判もすごく良かったです。あと、スーパーフォーミュラに参戦するようになってから、前に進む力を作るのが上手だなと感じています。今回は、その辺のタイヤマネジメントというか、タイヤの使い方を知りたいな……と思っています!」

 さて、三浦さんと山下選手のドライバーズトークをお楽しみください!

山下健太(KONDO RACING)

【ドライバーにレポーターに大忙しの三浦さん】

山下:あれ、今回(レース)に出ているのですよね?

三浦:はい! TCRジャパンに出ています。

山下:大変ですね、レースに出ながらインタビューもやって……。

三浦:でも、山下選手にどうしても聞きたいことがあったので……よろしくお願いします!

山下:はい。

三浦:あの、いきなりですけど……どうして金髪にしたんですか?

山下:スーパーGTもSFも(シーズン前の)テストが調子良くなかったので、とりあえず染めておくか! みたいな感じですね。スーパーGTで2019年にチャンピオンをとったときもチームメイトだった大嶋和也選手の助言もあって金髪にしました。

三浦:なるほど! そのおかげもあって、スーパーGTは……。

山下:“スーパーGTは”……。

三浦:あっ!、ごめんなさい!ごめんなさい!(焦)

山下:いやいや、大丈夫です。“スーパーGTは”なんですよ。スーパーGTは……。SFはちょっと『あれ?』みたいな感じなので(苦笑)

三浦:SFに関して、クルマとかチームのコミュニケーションなど、今の状況はどうですか?

山下:SFも5年目なので、チームとのコミュニケーションはうまくできていると思っていますが、何をやっても速さにつながらないというか、セットを変えても良い方向にいかない、という状況になってしまっていますね。

三浦:今のところ、(トンネルの)出口が見えていない感じですか?

山下:見えていないですね。昨年の中盤から、似たような状況は続いているので……そろそろどうにかしたいなと思っています。だけど、少し悪化しているのじゃないか? という勢いで悪いので、何をしたいいのかが分からない感じにはなっていますけど、一歩ずつやってしくないですからね……。

【三浦さんが山下選手にどうしても聞きたい“タイヤマネジメント”】

三浦:ところで、山下選手のドライビングをレーシングカートのころから見ていて、すごいなと思うところが“タイヤマネジメント”です。タイヤを持たせながらも、速さを引き出しているのですよね。どちらも両立しているところがすごいな と思うのですが、何か意識していることはありますか?

山下:いや……そこは、あまり意識していないです。でも、何となくカートの頃から『このくらいで走っていたら、これくらいタレるのかな』という予想が、自分の中でイメージできていました。それはカートから四輪に上がってからもですね。なんとなく『このままいくとダメだろうな』とか……。ほかの人よりはイメージがわきやすいかもしれないですね。まぁ、ほかの人は(どう感じているのか)知らないので、わからないですけど。

三浦:なるほど……。じゃあ、クルマやタイヤが変わっても『そろそろタレてくるな』というのが、すぐにわかるのですか?

山下:はい。

三浦:へぇ。それはすごいですね~!

三浦:それと関係するかはわからないですけど、クルマを前に進ませる力を作り出すのが、すごく上手だなと思うのですけど……。それは、よく“立ち上がり重視”とか言ったりしますけど、意識していますか?

山下:基本は立ち上がり重視ですね。CRGで全日本カート選手権を出たときにMAXSTER(マックススター)というエンジンを積んでいたのですけど、ちょっと下(低回転領域でのトルク)がなかった印象でした。だから、すごく立ち上がり重視で走らなきゃいけないなと、ずっと思っていましたね。その流れで今も立ち上がり重視で走っています。

三浦:なるほど……。

山下:だから、あまり突っ込まないんですよ。誰とロガーを比べても、僕のブレーキはちょっと一歩手前で、立ち上がりで稼ぐみたいな走りをしています。

三浦:(減速の開始は)一歩手前だけど……車速は残っている感じですか?

山下:そうですね。ブレーキはちょっと緩いのですけど、代わりボトムは若干高いか同じくらいで、立ち上がりは速いみたいな感じですかね。

三浦:(立ち上がりで)アクセル全開に達するのが早い感じですね。それは自分で考えて、そういうふうにしているのですか? お父さんもずっとカートを見ていたと思うのですが、どういうふうに教えてもらっていたのでしょうか?

山下:そこは、全日本カートのときに自分で考えてやっていました……それをやっているうちに、その走り方しかできなくなってしまったんですよ。今は突っ込もうと思って走っても、逆にあまり上手くいかないですね。

三浦:でも、予選と決勝で(走らせ方が)変わるじゃないですか。そうなると、やはり予選のときは突っ込んでいったりするのですか?

山下:一応、自分の中では突っ込んでいるつもりです。それでもほかの人と比べると、あまり突っ込んでいないので、もうちょっと改善できるのかなと思っています。

三浦:少し話が変わりますが……ツインリンクもてぎなどのコースで、山下選手は走行ラインをすごくワイドにとるような印象があります。コースのラインをトレースするときは、どのようなことを意識して走っていますか?

山下:それも、基本的に立ち上がり重視という感じで、できるだけ立ち上がりでまっすぐ走れるようなライン取りをします。だから進入を大きくとって、できれば(早く)向きを変えておいて、立ち上がりでアクセルを踏み込めるようなイメージでいます。

三浦:そこで向きを変えるというのが、みんな難しいところだと思うのですけど、そこで心がけていたりとか“自分の技”みたいなものはありますか?

山下:なんでしょうね……。逆にもうそれしかなくなっちゃっているのですよね(苦笑)。特別なことは本当なくて、それ以外はやろうとしても上手くできないという感じですね。

同じドライバーとして、気になるポイントをぐいぐい突っ込む三浦愛さん

【バトルで重要視するのは“気持ち”】

三浦:あと、スーパーGTとかで、いつもすごいバトルをしていますけど、そこでも色んな技があると思います。山下選手は、かなり切れ味鋭い走りをしているなという印象ですが、ああいったバトルをしているときはどのような心境なのですか?

山下:最近は、テクニックとかというよりも“気持ち”の問題の方が大きいかなと思っています。例えば、スーパーGTの開幕戦みたいに、遅くても抑えなきゃいけない場面もあります。テクニックでどうしようもできない時がどうしてもあると思います。そういう時は“絶対に譲らない!”という気持ちを、苦しくても持っていないといけないなと、思い始めてきました。

三浦:今までと比べて、変化してきたきっかけというか、心がけていることは何かありますか?

山下:心がけていることはあまりないですけど……やはり人と争っているので、その相手より強い気持ちを持っていないといけないと思います。でも、そういう気持ちって、なんとなく走りにも出てくる気がしていますね。それは(相手に)ナメられることにもつながっちゃいます。気迫だけはしっかり持ってやるようにしています。

山下:最近は特にテクニックよりも、そっち(気持ち)が大事だなと思っています。多少テクニックが追いついていなくて、ぶつかることがあったとしても、抜ければいいし、抑えられればいい。そこは気持ちでどうにか……という感じでいます。

三浦:なるほど。最後の質問になりますが、山下選手にとって“師匠”みたいな人はいますか?

山下:師匠ですか……。石浦宏明選手は、FCJやF3のときにアドバイザーを務めてくださり、現役ドライバーの中では一番色々なことを教えてくれてお世話になっていますね。あとは坪松唯夫さん(ル・ボーセモータースポーツ代表)ですね。初めてフォーミュラに乗ったころに色々なことを教えていただきました。

三浦:ちなみに、一緒にトレーニングに行ったりする人はいますか?

山下:トレーニングはひとりでやっています。別にほかのみんなと仲が悪いというわけではないのですけど……。レースの世界の中で、“親友”みたいな人はいないですね。

三浦:じゃあ、尊敬する人は?

山下:尊敬する人で言うと、立川祐路選手ですね。駆け引きがすごくうまくて、参戦歴が長いけどレースになるとルーキーみたいな勢いを感じます。その辺はすごいですね。レース中でもオーラがあるというか、近くにいられると、ちょっと厄介だなぁと思ったりします。

山下健太(KONDO RACING)

【インタビューを終えて/三浦愛さんの感想】

「(突撃ドライビング取材も)3回目になりましたけど……やはり、『凡人はここまでの領域に来られないのだな』と思いました(苦笑い)。やっぱり、何か卓越したものというか、天性の感覚があるんだなぁ……と思いました。今までインタビューした3人全員に、それが該当するなと思いました」「その中で山下選手は、私の理想に近いというか、私が今必要としているものを心がけていますし、実際に自分のものにしていっていることが聞けました。そのやり方とかを、少し垣間見れた気がしました。今の私自身の課題を山下選手に聞いてみたら『そういうふうに(課題を)切り開いていくんだ!』というところがわかって、ちょっと私自身にとってもヒントになりました!」

 次回もスーパーフォーミュラに参戦するトップドライバーに、突撃インタビューを予定。今度は誰に、どんな質問をするのか……お楽しみに!

【プロフィール】三浦愛(みうら あい)
1989年生まれ。カートで実績を重ね、フォーミュラチャレンジ、全日本F3選手権などに参戦。2014年には全日本F3Nクラスで日本人女性初優勝を飾った。2021年はスーパー耐久に参戦しつつ、スーパーフォーミュラではテレビ中継の現場解説を務める。
三浦愛 公式HP

三浦愛さんの突撃取材、第4回もお楽しみに!