【大学野球】監督も驚いた…サヨナラ勝利導いた重盗は「ノーサイン」 大会唯一・国立大の“頭脳”

和歌山大は10回裏1死一、二塁から「ノーサイン」で重盗を成功させた【写真:小林靖】

重盗は選手の独断、監督は「何をするんだろうな」

全日本大学野球選手権の第2日が8日に行われ、神宮球場では出場27校で唯一、国立の和歌山大が延長10回タイブレークの末、九産大に5-4で逆転サヨナラ勝ちした。勝利を手繰り寄せたのは、意表を突いた重盗。強気な采配にも思えたが、大原弘監督は一切サインを出していなかった。

1点を追う10回裏。無死一、二塁からのタイブレークで、代打・坂上昂汰内野手(3年)はバントで送らず強攻策に出た。結果は実らず1死一、二塁となったが、さらに久保田泰司内野手(4年)の打席を迎えたところで動いた。3球目に2人の走者がともにスタートを切り、重盗に成功。その後、満塁までチャンスを広げ、4回に本塁打を放っていた柏田樹外野手(4年)が二塁強襲の2点適時打を放った。

「指示は一切していません。選手らは何するんだろうなって見ていました。坂上はバスターとかが上手いから、ヒッティングでいくのかなとは思いましたけど」

大原監督の言葉通り、選手たちだけで事前に打ち合わせしていた。「強攻策が失敗したら、重盗を仕掛けよう」。目配せでスタートのタイミングを測り、成功させた。

「ノーサイン」は2015年から、「選手らが考えて野球の本質を話し合う」

2008年に和歌山大の指揮を執り始めた大原監督は、2015年から「ノーサイン野球」を徐々に導入していった。全日本大学選手権初出場の2017年は3割ほどサインを出していたが、今年は試合中のサインはゼロ。“選手が考える野球”を促す。

「パワー野球ではなかなか勝てない。レベル高い選手が集まってくる環境ではないため、私がサインを出すよりも、選手らが考え、野球の本質を話し合いながらやっていく。自分たちでしかけていくのが大事だと気づきました」

当然、難しさはある。この日3打点の柏田は「最初は監督からの指示がないからやりたいことをやっていいと思っていました。今は、相手の状況や味方の状況を理解して話し合いながらやっています」と話す。

次戦は9日、東京六大学王者の慶大と対戦。国立大の1大会最多勝利は、1998年の京都教育大と2010年の北海道大の2勝。“タイ記録”、そして2017年以来2度目のベスト8へ向け、陸の王者にノーサインで挑む。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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