「成功からは学べない」 鷹・工藤監督、盗塁失敗の周東を責めなかったワケ

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

同点で迎えた9回に周東が盗塁失敗、柳田は二塁を狙い憤死

■ソフトバンク 1ー1 広島(8日・PayPayドーム)

ソフトバンクは8日、本拠地・PayPayドームで広島と交流戦を戦い、1-1の引き分けに終わった。武田翔太、大瀬良大地の両先発が投手戦を展開。9回には栗林良吏投手からチャンスを作ったものの、得点は奪えなかった。

絶好のサヨナラ機を生かせなかった。同点で迎えた9回。先頭の柳町が中前安打で出塁すると、ソフトバンクベンチはすかさず代走に“切り札”周東を起用した。続く栗原の打席では盗塁のスタートは切れず、栗原は中飛に。1死一塁となり、主砲の柳田が打席に立った。

1ストライクからの2球目に周東は盗塁を狙った。広島バッテリーの選択はウエスト。會澤がストライク送球で、周東は敢えなく盗塁に失敗。サヨナラのチャンスは、一転、2死走者なしに変わった。

ここから柳田は左中間への安打を放つ。一塁を蹴ると、積極果敢に二塁を狙った。猛スピードで滑り込み、塁審の判定はセーフ。だが、広島・佐々岡真司監督からのリクエストによりリプレー検証が行われ、判定が覆りアウトとなり、引き分けた。

「ファーストで止まっているようではウチの野球じゃないかなと思う」

9回のチャンスが2度の走塁死により、実らなかったソフトバンクだが、試合後の工藤公康監督は淡々としたものだった。

柳田が二塁を狙った最後の場面について「あそこはいかなきゃ駄目ですね」と積極性を高く評価する。1つ先の塁を狙うのはソフトバンクのスタイルだけに、指揮官は「ファーストで止まっているようではウチの野球じゃないかなと思う。行って、セーフになる、アウトになるはしょうがない。(二塁までいけば)もう1本でサヨナラですからね」と称えた。

また、ウエストされて盗塁に失敗した周東に対して、工藤監督は「走ってアウトになることは悪いことじゃない」と言う。周東に求めたのは“学び”。「失敗したところから学ぶのが大事。成功したところからは、自信はついても、駆け引きとかは学べない」と語った。

周東はサヨナラの走者。1死となり、打席には最も期待できる柳田がいる。ワンヒットでサヨナラにするために、二塁への盗塁を狙いたい場面。それは、広島バッテリーも十分に理解している状況だった。「1ストライクになって、走ってくるだろうからバッテリーは1球くらい外すだろうな、というのを学んでくれたらいい」と指揮官は語り、失敗を“糧”にすることを望んでいた。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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