遠藤周作事典が刊行 文学の全容、人物像に迫る

遠藤周作事典の表紙

 「沈黙」など長崎県ゆかりの作品を残した作家遠藤周作(1923~96年)の没後25周年を記念し、「遠藤周作事典」(鼎(かなえ)書房)が刊行された。作品解説などを通じ、キリスト教など多彩なテーマで書かれた遠藤文学の全容と遠藤の人物像に迫っている。
 遠藤の研究者らでつくる遠藤周作学会(川島秀一代表、105人)が約5年前から研究資料を集約し、準備を進めてきた。
 これまでに刊行された遠藤周作文学全集(新潮社、全15巻)に収録された全作品と、単行本として刊行された小説、戯曲、評論、エッセーを網羅。計436の作品ごとに出典、研究者らによる解説、評価などを記している。昨年6月、遠藤周作文学館(長崎市東出津町)での発見が公表された「影に対して」も取り上げている。
 ほかに、遠藤と交流のあった人物や趣味、演劇など多方面にわたる文化活動などについても触れている。巻末には付録として「英語圏における遠藤文学の評価と研究動向」や著書目録、年譜などを掲載している。執筆に関わった同館の川崎友理子学芸員(28)は「研究者向けではあるが、作品が書かれた背景などがよく分かる内容になっている。遠藤ファンにとっても興味深い1冊だろう」と話している。
 A5判、560ページ。1万450円。

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