【インドネシア全34州の旅】番外編 鍋山俊雄さん選 インドネシアで絶対に行っとくべき場所

文と写真・鍋山俊雄

以前、この『+62』のインタビューで、自分のモットーとして旅行は「行ける時に行っとく」と答えた(CROSS PEOPLE「フットワーク軽く。鍋山俊雄さん=弾丸トラベラー」)。駐在という身での限られた時間の中では、行ける時に行っとかないと何が起きるかわからない、という思いで言ったのだが、まさかこんな、旅はおろか外出もままならない、という事態になるとは夢にも思わなかった(編注:新型コロナウイルス禍)。今の事態が収束したら旅行に行きたい、という方はたくさんおられるだろう。

個人的によく聞かれる質問が、「インドネシアの旅行先はどこがお薦めですか?」、または「どの州が一番良かったですか?」。定番の質問でありながら、意外と回答は難しい。なぜなら旅行というのは、その人の興味と何を求めるかによって、行きたい場所がまったく変わるからだ。

なので、私の独断と好みで、「インドネシアにいる間に絶対に行っとくべき場所」を、有名な観光地であるバリとジョグジャカルタを除き、7カ所、選んでみた。

①タンジュンプティン国立公園(中部カリマンタン州)〜野生のオランウータン

日本ではなくインドネシアでしか見られないもの……という視点で考えれば、日本だと動物園でしか見られない動物がインドネシアでは野生の状態で見られる、ということが挙げられる。オランウータンは世界でも、インドネシアのカリマンタンとスマトラ島の一部にしか生息していない。カリマンタンにあるタンジュンプティン国立公園内のオランウータン保護区に入れば、彼らの生活の一部を垣間見ることができる。巨体で木々を登り、木から木へと移動していく姿は本当に見応えがある。

②ブロモ山〜月面のような火山の絶景

火山国のインドネシアには数多くの山があるが、登山が趣味でなくても比較的アクセスが簡単かつ絶景を楽しめるのが、ここブロモ山。

正確に言うと、ブロモ山に登るというよりも、ブロモ山および周辺を一望する展望ポイントからの眺めが有名だ。早朝の日の出時に薄雲がかかっている風景は「月面のようだ」とも称される。日の出を見るためにはブロモ周辺の宿を午前3時半ごろに出る必要があるが、その労に報いる絶景が迎えてくれる。

③ヌサペニダ島〜島の絶壁巡り

観光地として有名なバリ島、その隣で徐々にバリ化(?)しつつあるロンボク島の間にあるのがヌサペニダ島だ。スキューバダイバーの間ではこの島の周辺はマンボウやマンタの見られるスポットとして有名だが、実は、上陸しても見所が多い。絶壁の数々、そして、そこを降りた所にあるプライベート感溢れるビーチがこの島の魅力である。

バリ島からスピードボートでの日帰りツアーもあるが、日帰りだと、島の西側のポイントをあわただしく見るだけなので、できれば2泊以上して絶壁巡りをしたい。ただし、ジャカルタの高層アパートの屋上から地下まで降りて、またそれを上り返す、といった繰り返しのようになるので、体力に自信がない方は、上からの絶景を眺めるだけにしておいた方がいい。

④コモド国立公園〜コモド海域での夕日

オランウータンと並んでインドネシア特有の珍獣と言えば、コモドオオトカゲ(通称コモドドラゴン)。コモドドラゴンそのものを見るのも良いが、コモド島、リンチャ島、パダル島などを巡る海の風景が本当に素晴らしい。

フローレス島のラブアンバジョが起点となる。ジャカルタからラブアンバジョへは直行便もあり、アクセスは難しくない。ラブアンバジョから、日帰りや、ボートに宿泊しながら海域を巡るツアーがたくさん出ている。ツアーボートのデッキでのんびりしながら見る素晴らしい島々の眺め、そして、コモド海域での夕日が忘れられない旅になるだろう。

⑤フローレス島〜多様な民族と文化

フローレス島は東ヌサトゥンガラ州の中核を成す、比較的、大きな島だ。コモド国立公園を巡る船旅は、このフローレス島の西岸のラブアンバジョから出る。

それ以外にも、この東西に長く伸びた島には多様な民族と文化があり、ラブアンバジョに始まり東端のララントゥカまで、それぞれの街に特色があって楽しめる。個人的には、インドネシアの特色が凝縮した島だと思っている。

⑥スンバ島〜手つかずの自然、独特の雰囲気

スンバ島はフローレス島の南側にある大きな島。行くのはバリ経由で、島の西側と東側の2カ所に空港がある。

高いとんがり帽子の屋根の家、馬と広い草原、そして独創的な織物(絣織り=イカット)など、スンバ島から連想される言葉はたくさんある。手つかずの自然と、この島に流れる独特な雰囲気を味わいに、また是非訪れたい所だ。

⑦バンダ諸島〜香料諸島の歴史を刻む

インドネシアが世界史上で恐らく最も注目を浴び、欧州列強が先を争ってこの地に目を向ける契機となったのが、香料だ。「香料諸島」と呼ばれるマルク周辺海域の中でも、最もドラマチックな歴史と数々の遺跡があり、そして素晴らしい海を楽しむことができるのがバンダ諸島。

ポルトガル、スペイン、英国、オランダなど当時の欧州列強がこの地域でしか採れなかったナツメグを巡り、激しい争いを繰り広げた。現地民への圧政、服従と抵抗の歴史の跡が、この小さな島のあちこちに垣間見ることができる。あまり知られていないが、徳川の時代に入り天下が統一され、日本が太平となった中、多くの戦国侍が傭兵としてオランダに雇われてこの地域に送られている。オランダが、抵抗するバンダネイラの実力者たちを虐殺した際にも日本人傭兵が雇われており、凄惨な処刑シーンを描いた絵画が島の博物館にある。

秘境ダイビングスポットとしても有名だが、シュノーケリングだけでも素晴らしい海中風景を楽しめ、個人的にはベスト・シュノーケリングスポットだった。

ナツメグなど、島の恵みを工夫した料理も味わい深い。マルク州アンボン島から週2回しか出ないスピードボートで5時間以上もかかる遠隔地だが、もし行ければ、素晴らしい思い出になることは間違いない。

鍋山俊雄(なべやま・としお)
インドネシア在住期間は計13年。仕事でジャワ、カリマンタン、スマトラへの出張が多いことに加えて、「週末弾丸トラベラー」としてインドネシア各地を放浪し、全34州を訪問した。

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