神奈川県は9日、県内で28~30日に実施予定の東京五輪の聖火リレーについて、歌手で俳優の加山雄三さん(84)が参加を辞退したと発表した。県内の聖火リレー辞退者は4人目。
茅ケ崎市出身の加山さんは1960年代以降に流行した「湘南サウンド」を代表するアーティストで、リレー初日となる28日に藤沢市内を走る予定だった。
県によると、8日夜に所属事務所から電話とメールで辞退の連絡があった。県の担当者は「辞退は残念だが、ご本人の意向なので尊重したい」と話している。
加山さんは、東京五輪について「心から応援し、また自らも盛り上げたい気持ちでいっぱいでした」とし、「しかしながら今あらためてこの世界の状況を見た時、手放しに開催を喜ぶことが僕はできません」とコメント。
さらに「勇気を持って僕は辞退いたします。今は、することもやめることも勇気が必要だと思います」とも訴えた。
県は加山さんの走行区間について、補欠ランナーからの繰り上げは行わず、前後のランナーの走行距離を調整して対応する。
県内の聖火リレーを巡っては、2012年ロンドンパラリンピック競泳金メダリストの秋山里奈さん、19年ラグビー・ワールドカップ日本代表の稲垣啓太選手、元宝塚歌劇団雪組トップスターの望海風斗(のぞみふうと)さんが既に辞退している。
加山さんのコメント全文は次の通り。
僕はスポーツが大好きです。
前回の1964年東京オリンピックの時、僕は黒澤明監督の映画『赤ひげ』の撮影をしていました。
毎日撮影で缶詰状態。観戦したり応援することがほとんど出来ず悔しい思いをしました。
あれから57年―。
今回の東京オリンピックこそ、心から応援し、また自らも盛り上げたい気持ちでいっぱいでした。
しかしながら今改めてこの世界の状況を見た時、手放しに開催を喜ぶことが僕は出来ません。
一度はお引き受けをした聖火ランナーですが、そして直前になってしまいましたが、勇気を持って僕は辞退いたします。
今は、することもやめることも勇気が必要だと思います。
僕にとってひとつの夢であった聖火ランナーを辞退することは残念でなりません。
大会関係者の皆さまのご尽力はもちろん、選手のみなさんのこれまでのご努力は並々ならぬものと存じますが、僕なりの決断をどうかご容赦ください。