TCRデンマーク開幕戦はヤン・マグヌッセンが貫禄のパフォーマンス。ポール獲得から3戦全勝発進

 STCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権同様に、改訂版カレンダーにより遅い開幕戦を迎えた2021年のTCRデンマーク・シリーズは、本来は第2戦予定だった6月5~6日のパドボルパークからさらなる変更を受け、リング・ユールスランドでのオープニングラウンドを開催した。このイベントで、LMレーシング所属の大ベテラン、ヤン・マグヌッセンが今季スイッチの新型クプラ・レオン・コンペティションTCRでポールポジション獲得から3戦全勝の“クリーンスイープ”を達成し、週末完全制覇で盤石のシーズン幕開けを飾っている。

 FDMユランリングで開催された合同テストでも最速を記録していたマグヌッセン。彼はフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRから乗り換えた兄弟モデルでもそのスピードを維持し、チームメイトのニコライ・シルベスト(クプラ・レオン・コンペティションTCR)とともに創設2年目のシーズン開幕で、予選フロントロウを占拠する好スタートを切った。

「プレシーズンテストで最速だったのが単なる偶然ではなかったことに、本当に安心しているし、うれしく思っているよ」と、予選直後にも安堵の表情を浮かべたマグヌッセン。

「それ以来、我々はすべてを機能させるため懸命に取り組んできたが、テスト以来(カレンダーや開催地など)多くの条件が変更されている。その点でもポールを獲得することほど、チームに感謝を伝える良い方法はないよね」

 明けた日曜午前10時を前にスタートが切られたレース1は、フロントロウのLMレーシング勢に続き、セカンドロウ3番グリッドに着けたル・マン24時間クラス優勝経験者のキャスパー・エルガード(プジョー308 TCR/ブライアン・マドセン・モータースポーツ)と、同4番手に初代シリーズ王者のキャスパー・H・ジェンセン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/Massive Motorsport)のオーダーで1コーナーへ。

開幕前合同テストでも最速を記録したヤン・マグヌッセンが、予選で順当にポールを獲得する
リバースグリッドのR2でも、すぐさま首位争いの輪に加わったマグヌッセンは、チャンピオンも仕留めてみせる

■クプラがデビュー戦でワン・ツー・フィニッシュ

 昨季はチームメイトで同じホンダをドライブしたエルガードに対し、再三のアタックを仕掛けたディフェンディングチャンピオンだったが、プジョー308 TCRの牙城を崩すことはできず17周のチェッカーを迎え、チャンピオンが初戦表彰台を逃す無念の結果に。

 その前方は一切の波乱もなくレース距離を走破し、マグヌッセンが幸先良く先勝を収めて、シルベストとともに新型クプラのデビュー戦でワン・ツー・フィニッシュを飾っている。

 続くレース2は前戦トップ8のリバースグリッドが採用され、現チャンピオンの僚友ケン・バッハがポールから発進したものの、スタート直後には6番グリッドだった王者ジェンセンと、9番手発進のレース1勝者マグヌッセンがすぐさま先頭へと躍り出る。

 4周目までなんとか首位をキープしたシビック・タイプRだったが、5周目の攻防でデンマーク国内のDTC(Danish Thundersport Championship)2018-2019年連覇の実績を持つジェンセンに対し、F1はもとより長く耐久シーンで活躍してきた経験豊富な男が仕掛け、マグヌッセンが首位奪取に成功する。

 そのまま18周を走破して週末2度目のトップチェッカーを受けマグヌッセンが連勝。2位ジェンセンに続き、最後の表彰台には終盤でマイケル・マルクセン(プジョー308 TCR/マルクセン・レーシング)を仕留めたエルガードが続いている。

 そして最終のレース3は、ここまでの2ヒートで獲得した総合ポイント順でグリッド位置が決められると、ここでもポールシッターとなったマグヌッセンは24周のレースでふたたびの“ライト・トゥ・フラッグ”を決め3連勝を達成。ジェンセンとエルガードを従えて、開幕ロケットダッシュに成功した。

 これにより、ランキング2位の王者ジェンセンに対し28点差の大量リードを築いたマグヌッセンは、選手権首位で7月3~4日の第2戦FDMユランリング戦を迎える。

今季からプジョー308 TCRにスイッチしたキャスパー・エルガードは、3戦連続3位表彰台と気を吐いた
初代シリーズ王者のキャスパー・H・ジェンセン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/Massive Motorsport)は、表彰台を逃したR1の結果が響く形に

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