児童手当頼みは危険!?世帯年収約1100万円で3人分の教育費を貯めるには?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、32歳、会社員の男性。世帯年収は約1,100万円で、1・3・5歳の3人のお子さんを持つ相談者夫婦。3人分の教育費をしっかり貯められるか不安だといいます。FPの宮里惠子氏がお答えします。

子ども3人の教育費をしっかり貯められるか不安。どのような手段(預金、投資等)で備えていくのが効率が良いか知りたいです。また費用については「大学の入学金・授業料」「下宿の仕送り」「中高一貫校受験・大学受験の塾の費用」を想定していますが、他に抜けやもれがないか知りたいです。

条件・想定は下記の通りです。

・公立中高一貫校受験の可能性がある

・国立大(修士含む)であれば下宿費用まで親で工面したい。私立大(修士含む)は自宅からの通学を前提としたい。

・下宿時には一人あたり月12万円の仕送りをしたい(本当に貯められるか?また額は適正か?)

・できれば奨学金は使用したくない。

【相談者プロフィール】

・男性、32歳、会社員、既婚

・同居家族について:

夫(相談者)、会社員、手取り月収40万円程度

夫税引前年収は現状900万円→1000万円程度までは5年程度で上がる見込み

妻(31歳)、派遣社員、手取り月収10万円程度

子ども3人(1歳、3歳、5歳)

・住居の形態:持ち家(戸建て/茨城県)

・毎月の世帯の手取り金額:50万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:180万円

・毎月の世帯の支出の目安:35万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:16万5,000円

・食費:5万5,000円

・水道光熱費:2万5,000円

・教育費:2万5,000円

・保険料:5万円

・通信費:1万2,000円

・車両費:1万円

・お小遣い:6万円

・その他:0円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:0円

・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円

・現在の貯蓄総額:250万円

・現在の投資総額:つみたてNISA(夫)170万円、確定拠出年金(夫)220万円、積立型生保170万円

・現在の負債総額:住宅ローン5250万円(残り31年、フラット35S、金利0.8%→6年後から1.1%)


宮里:家計を拝見いたしました。ご相談者は、すでに住宅を取得して、かわいい盛りのお子さんが3人いらっしゃるとのこと。いまから教育費のことをしっかり考えていらっしゃるのはとても心強いお父さんですね。

調査データから見る教育費の目安は?

まず、ご相談者の想定している進路に沿って教育費を試算してみましょう。

公立中高一貫校への進学を考えていらっしゃるとのことですが、私立中学の受験程ではないにしろ、全く準備をしなくてもいいという訳ではなさそうです。ただし高校受験のための通塾が必要ないのは大きなメリットです。大学に関しては、国立大学(修士を含む)であれば下宿(アパート等での一人暮らし)、私立大学(修士を含む)の場合は、自宅から通学するとします。

「平成30年度子供の学習費調査」(文部科学省)によると、公立小学校の学習費総額の平均は年間約32万円、公立中学校が年間約49万円、公立高校では年間約46万円という結果になっています。これに公立中高一貫校受検のための通塾費用として、小学校5年生、6年生に年間50万円程度、高校3年生で大学受験塾費用を100万円見積りました。

令和2年度「教育費負担の実態調査結果」(日本政策金融公庫)では私立理系大学の在学費用(授業料等)は年間192.2万円、入学年度には受験料や入学金等の納付金(入学しなかった大学を含む)が別途94.2万円かかっています。国立大学の在学費用(授業料等)は年間115万円、入学年度は別途77万円かかるという結果です。

ご相談者は、お子さんの下宿時には月額12万円の仕送りを見込んでいましたが、統計によると、自宅外通学者の場合の保護者からの仕送りは平均で年間90.3万円(月額7.5万円)です。初年度には、自宅外通学を始めるための費用(アパートの敷金・家財道具の購入費等)が平均で39.3万円かかっています。また、「平成30年度学生生活調査報告」(独立行政法人日本学生支援機構)によると、大学院(修士課程)の在学費用は年間112万円です。

教育費のピークは15年後!

以上のデータから、3人のお子さんがすべて(1)自宅通学で私立理系大学に進学し、修士課程まで進んだ場合と、(2)下宿して国立大学に進学し、修士課程まで進んだ場合の教育費の合計を比べてみましょう。

少し意外ですが、下宿費用を年間約90万円としても、国立大学に進学して下宿するほうが、自宅から私立大学に通うよりも費用がかかるという結果になりました。

もちろん、3人のお子さんが全く同じ進路になるとは限りません。公立中高一貫校に進学しなければ、高校受験のための塾費用がかかりますし、私立高校に進学する可能性もあります。お子さんが女の子の場合、アパート等を借りる際にセキュリティの面で家賃が高額になり、仕送り額も高額になるかもしれません。

いずれにしても、教育費が一度にかかるのは、最初のお子さんが大学3年生、2番目のお子さんが大学1年生、3番目のお子さんが高校2年生の頃から4年間です。お子さんたちの年齢が近いので、教育費が重なる年数は短くて済みます。今から15年後、ご相談者が48歳のころを目指して貯蓄を始めましょう。

児童手当ありきではなく、一人につき月2万円の貯蓄を目指して

ご相談者から頂いた毎月の収入と支出の内容では、収入に対して住宅ローンがやや重い負担になっているのが気になりますが、そのほかの支出の項目に問題のありそうな点は見当たりません。バランスの取れた内容だと感じます。

ご夫婦のひと月の手取り合計額から支出の明細の合計を差し引くと約10万円残る計算になりますが、明細では、毎月の貯蓄額は「0円」です。使途不明金はありませんか?

これからは、お子さんひとりにつき月2万円ずつ、合計6万円を貯蓄に回しましょう。

少なくとも現在支給されている児童手当には手をつけず、それぞれのお子さんのために貯蓄します。ただし、児童手当については、今後収入制限が厳しくなる方向にあるようですので、ご相談者の世帯収入では支給されなくなる可能性があります。児童手当ありきではなく、月2万円の貯蓄を目指してください。

お子さんが高校卒業するまでを目途とすると、1番目のお子さんは今後13年間、2万円ずつ積み立てるとそれだけでも312万円です。2番目のお子さんは15年間で360万円、3番目のお子さんは17年間で408万円積み立てられます。

貯め方は「コツコツと」が基本

教育費は、基本的に必要な時期が決まっています。銀行等の預貯金は利率がほとんどゼロに等しいですが元本割れがありません。投資商品は社会情勢によって一気に元本割れをするリスクがあります。必要な時期に元本割れをしていては、教育費の目的を達することができません。

基本的には、教育費の積立は、銀行の預貯金や、元本割れのないこども保険(学資保険)等でコツコツと積み立てることをお勧めします。

プラスアルファを投資に充てる

今後お子さんの成長に伴って、食費や通信費その他の支出が増えることはあっても減ることはありません。3番目のお子さんの手が離れれば、妻の収入を増やすことも考えましょう。

将来、車の買い替え費用や自宅の修繕費用等の大きな出費が見込まれます。現在、ボーナスで年間100万円を貯蓄していますので、継続して臨時の出費に備えてください。

現在、すでにつみたてNISAをされていますし、老後資金として確定拠出年金があります。投資に興味があるようなら、少しずつ積立額を増額してはどうでしょうか。

ご相談者は、3番目のお子さんが大学院を卒業するときにまだ55歳です。定年まで約10年ありますので、それから本格的に老後資金を考えても間に合います。そのころ資金に余裕ができれば、住宅ローンの残債を一括返済するのもいいでしょう。

子どもの進路は、予定通りに進むとは限りませんが、今のご相談者のように先々を見越して、時間を味方につけることで、充分準備が可能となります。かわいいお子さんの子育ても楽しんでください。

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