木星の衛星ガニメデの最新画像、NASAの探査機ジュノーが撮影

アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)は現地時間6月8日、木星の衛星「ガニメデ」に接近してフライバイ探査を行った木星探査機「Juno(ジュノー)」から送られてきたガニメデの最初の画像2点を公開しました。

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【▲ 木星探査機「ジュノー」の可視光カメラ「JunoCam」が撮影した衛星ガニメデ(Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS)】

こちらが公開された画像の1つで、ジュノーに搭載されている可視光カメラ「JunoCam」によって撮影されたガニメデの姿です。データの解像度は1ピクセルあたり約1kmとされています。画像には氷の外殻に覆われたガニメデの表面に分布する明るい領域暗い領域、それにクレーター溝状の地形といった特徴がはっきりと写し出されています。

JPLによると、今回公開されたJunoCamの画像は緑色のフィルターを使って取得されたデータをもとに暫定的に作成されたモノクロ画像であり、赤色と青色のフィルターによるデータと合わせることで、最終的にカラー画像が作成できるようになります。また、作成の時点では画像の適切な生成に必要な補助データ(SPICEカーネル)が利用できず、ガニメデの輪郭にデータの継ぎ目(※)が見えていますが、こちらも補助データを利用することで解消されるとのことです。

※…JunoCamは姿勢を安定させるために毎分2回転しているジュノーの機体に固定されていて、ターゲットの画像は機体の回転にあわせて視野に入った際に帯状に取得されるため、画像を作成する際にはこの帯状のデータを並べて正確につなぎ合わせる必要があります。

【▲ 木星探査機「ジュノー」の恒星参照ユニット(SRU)カメラが撮影したガニメデの夜側の地表(Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI)】

もう1つはこちらの画像で、ジュノーのナビゲーションに利用される恒星参照ユニット(SRU)のカメラによって撮影されたガニメデの夜側表面のモノクロ画像です。データの解像度は1ピクセルあたり600~900mとされています。恒星参照ユニットカメラは光量の少ない暗い環境での撮影に適した低照度カメラであり、JunoCamが直射日光に照らされた昼側の様子を捉えたのに対し、木星が散乱させた太陽光に薄暗く照らされた夜側の様子を捉えることに成功しています。

直径5268kmのガニメデは水星よりも大きな太陽系最大の衛星です。過去の観測においてガニメデは独自の磁場を持つことが明らかになっており、その内部は氷、岩石、鉄が分化した層状の構造を成していると考えられています。今回ジュノーは日本時間2021年6月8日未明にガニメデの表面から1038km以下の距離まで接近しており、2000年5月にガニメデへ接近した木星探査機「Galileo(ガリレオ)」の1000kmに匹敵する21年ぶりの近距離からガニメデを観測しました。

ジュノーのミッションはもともと2018年までの予定でしたが、軌道の変更が中止されたことで2021年7月まで一度延長され、2021年1月には最長で2025年9月まで再延長されています。今回のガニメデのフライバイ探査はミッションの再延長にともない計画されたもので、今後は木星の観測を継続しつつ2022年9月「エウロパ」を、2023年12月2024年2月「イオ」をフライバイ探査する予定です。

Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
Source: NASA/JPL
文/松村武宏

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