「いなくなったら困る」 鷹・工藤監督も認める“便利屋”中村晃の重要性

ソフトバンク・中村晃【写真:藤浦一都】

「怪我をされたら困ります。いなくなったら困る存在」

■ソフトバンク 8ー4 広島(9日・PayPayドーム)

ソフトバンクは9日、本拠地PayPayドームで広島と交流戦を戦い、8-4で快勝した。先発の東浜が7回4失点の粘投で今季初勝利。打っては中村晃外野手が先制の適時打、決勝の勝ち越し2点適時打と2安打3打点と活躍し、引き分けを挟んで3連勝とした。

勝負を決めたのは“レフティースナイパー”のバットだった。同点に追いつかれて迎えた5回2死満塁のチャンス。1ボール2ストライクと追い込まれてから、中村晃は5本のファウルと2球のボールを選び粘った。「なんとかしたいな、と。四球のイメージはなかった。色んな球に対応できたと思います」。

そして、フルカウントからの10球目、広島先発の野村が投じたカットボールを弾き返して右前へ。スタートを切っていた走者2人が次々に生還して2点の勝ち越しに成功した。この日は2回にも貴重な先制の適時打を放っており、2安打3打点とチームの勝利に貢献した。

今季はここまで打率.267、3本塁打28打点。数字だけ見れば、物足りなさが残るが、中村晃には数字だけでは計れないほどにチームに欠かせない選手だ。工藤公康監督も「怪我をされたら困ります。いなくなったら困る存在。最善の注意を払っています」と、その存在の大きさを認める。

打順を問わない多様性「何番だから、と意識はしていない」

打率は.267ながら、出塁率はそれを大きく上回る.373を残す。この日の2本の適時打のように、ここ一番での頼もしさはピカイチだ。さらには、目立つことはなかなかないが、一塁だけでなく外野も含めて守備面でもその安定感が光る。

今季も起用される打順は日々変わる。今季はこの日入った6番が15試合目。そのほか、2番で7試合、3番で1試合、5番で28試合、そして7番でも11試合に先発している。上位であれば出塁、5番以降であればポイントゲッターと、チームから求められる役割は変わるが、毎年のようにそのタスクをこなせる人材はほかにいない。

この役回りを中村晃自身は「基本は塁に出ること、あとはヒットを打つことだけ考えています。単純なことですよ。何番だから、というのは意識していないですね」とあっけらかんと語る。若手の頃から様々な打順で打ってきたからこそ、こうした考えに行き着いたところもあるだろう。

「4番を打ったりもしましたけど、いい気分転換かなと。動いて面白いなと思っています。自分のできることしかできないですからね。4番になったからといって、ホームランバッターにはなれないんで」。さらりと言えるところに中村晃の“強み“がある。

決して柳田や千賀のような派手さはない。だが、チームにとっては絶対に欠くことのできない重要な存在だ。この日の中村晃の活躍は改めてそう強く認識させるものだった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

© 株式会社Creative2