ドン・ファン妻を5年前の詐欺罪で追起訴 和歌山地検の「ウルトラC作戦」弁護士が推測

須藤被告

“紀州のドン・ファン”こと和歌山県田辺市の資産家・野崎幸助さん(当時77)が急性覚醒剤中毒で死亡した事件で、殺人と覚醒剤取締法違反の罪で起訴した元妻の須藤早貴被告(25)について和歌山地検は9日、2015~16年に札幌市の60代男性から計約2981万円をだまし取ったとして詐欺罪で追起訴した。

起訴状によると須藤被告は、15年3月に札幌市内で男性に「(第三者に)弁償しなければならない」とウソをつき300万円を詐取。同年6~7月には「海外留学の準備金の支払いを助けてほしい」と再びウソを言って1507万円、16年1月にも第三者への弁償金名目で約1174万円をそれぞれだまし取った。

15年といえば、札幌市出身の須藤被告が高校を卒業し、地元の美容専門学校に通っていたころ。

「体験実習での美容師の仕事の大変さが割に合わず、『楽して金儲けしたい』と知人にボヤいている。この詐欺事件で味をしめたことが、“後妻業”のきっかけとなったのかも」(事情通)

須藤被告は野崎さん殺害について黙秘を続けているとみられる。殺人罪などで起訴した日に詐欺容疑で再逮捕し今回の追起訴に至った理由について、至道法律事務所の岡筋泰之弁護士はこう話す。

「起訴後は保釈申請を行うことができる。殺人罪を否認している中での起訴なので保釈は容易ではないでしょうが、再逮捕でまずは身柄拘束を確実にする。通常、起訴後は被告人の取り調べができないですが、詐欺罪に関することとはいえ、取り調べを続行することができます」

ほかにも当局側にこんなメリットがあるという。

「詐欺罪を認めれば『殺人もやっているのでは』と裁判員が印象操作される可能性があります。もし争ったとしても、証拠があって有罪に持ち込めそうなら『ウソの弁解をした=殺人罪もウソの弁解だろう』として、供述の信用性に影響が出てくるところです」

地検は認否を明らかにしていないが、殺人罪については状況証拠だけが頼りといわれるだけに、さまざまな思惑がありそうだ。

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