「特定技能」276人 1年で3倍増も コロナ禍 高まる需要に追いつかず

 外国人の就労拡大のため、2019年4月に新設された在留資格「特定技能」。出入国在留管理庁のまとめによると、制度開始から2年となる今年3月末時点で長崎県内に同資格で滞在する外国人は276人だった。昨年以降、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入国制限も設けられたが、1年前の昨年3月末(92人)から3倍に増えている。
 276人のうち半数以上の153人は農業分野。県内農家では高齢化や後継者不足で技能実習生ら外国人材の受け入れが進んでいる。県農業経営課によると、この153人のうち、47人は県出資法人などが設立した農業人材派遣会社「エヌ」に在籍。全員カンボジア人で7割弱は島原半島の農家などで働いている。
 昨年9月以降にエヌの在籍は30人近く増加したが、県内外で高まる外国人労働者の派遣需要には追いついていないのが実情。特定技能の試験に合格したが新型コロナの影響で来日できず、母国で待機している外国人も一定数いる。農家からは「人手不足。(外国人は)いつ入ってくるのか」といった問い合わせが増えているという。
 過去に半年ほどエヌから外国人を派遣してもらったという南島原市の農家の男性は、新型コロナに振り回される現状をこう嘆く。「外国人に頼りすぎていた」。技能実習生や特定技能の外国人の雇用を希望しているが、彼らの入国のめどは立っていない。
 男性が受け入れていた技能実習生は実習期間終了後、新型コロナの影響で帰国できず「特定活動」の資格を得て残ってくれた。だが今月いっぱいで辞めることになり「次が来なければ作付けを減らすしかないだろう」。周辺の農家も同様の悩みを抱えているという。
 県内の特定技能276人の内訳は、農業のほかに造船・舶用工業57人、飲食料品製造業32人、漁業15人、産業機械製造業14人、建設3人、介護1人、素形材産業1人。
 地域別では雲仙市が67人で最も多く、諫早市が50人、佐世保市が46人、島原市が32人と続いた。

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