生活に楽しみを 『オンライン会話』で障害者と高齢者つなぐ 就労継続支援B型事業所「ほのちゃん家」

パソコンで高齢者との会話サービスの練習をする利用者=時津町、ほのちゃん家

 長崎県西彼時津町浦郷の就労継続支援B型事業所「ほのちゃん家(ち)」は、障害がある利用者と、1人暮らしの高齢者にオンラインで会話を楽しんでもらうサービスの準備を進めている。障害者と高齢者をリモートで結ぶ「コロナ時代」にマッチした取り組みだ。

◆ペアで練習

 「お久しぶりです。映っていますか」。同事業所の女性利用者2人が、パソコンに向かって話し掛ける。画面の向こうには“協力者”の60代の女性。会話サービスの開始に向け、利用者が行っている練習風景の一こまだ。
 「きつくないですか」。さりげなく、その日の健康状態や生活状況について尋ねながら、好みの食べ物やテレビドラマ、趣味など会話に花を咲かせていく。練習では利用者の1人が主に話し役。もう1人は話の内容を記録している。
 B型事業所は、障害者に働く場を提供したり就労支援をしたりして、工賃を支給する施設。「ほのちゃん家」は昨年11月に開所し、現在、10~60代の男女7人が利用している。うち5人が病気や事故で体が不自由になった身体障害者。それぞれのペースに合わせて作業しながら、再就労への道を探っている。
 同事業所は会話サービスの準備と並行して、工賃を得るための中古品ネット販売作業も実施している。間接的に寄付された衣料品や日用雑貨、陶器、プラモデルなどの品物を利用者が検品。傷や汚れがないか確認し写真撮影、画像加工を経て、職員がネットにアップする。売上金の一部が工賃に充てられる仕組み。

◆新たな試み

 同事業所を運営する一般社団法人「ほの企画」の代表理事、小野晃さん(57)によると、40代以上の比較的若い身体障害者の中には家に引きこもってしまう人もいるが、「ほのちゃん家」の新たな試みは、利用者に喜びや自信を与える効果を生んでいる。
 約5年前の交通事故の後遺症で今も左半身にしびれが残るという元看護師の女性(49)は、オンラインで週3人と会話の練習をしている。「知らない人と話すのは緊張するが自分を受け入れてもらえて、やりがいがある」とうれしそう。ネット販売では主に商品の写真撮影を担当。「何もしなければ家にいるだけだった。将来はパートでもいいから復職したい」と目標を語る。
 車いす利用者で長崎市の小柳咲子さん(18)は、パソコンで商品紹介画像を加工。「画面上でできるだけ実物に近い色味に仕上げ、見やすくしたい。出した品が売れるとうれしい」。日々の作業がスキルアップにもつながっている。
 会話サービスは今後、ボランティアで始める予定。施設管理者の宮田幸子さん(39)は「人と関わることで障害がある人たちのコミュニケーション力も向上するし、サービスを受ける側の高齢者も見守られて安心し、生活に楽しみが増えるのではないか」と双方への効果を期待している。

ネット販売する品物を撮影する利用者=時津町、ほのちゃん家

© 株式会社長崎新聞社