証券会社に口座を開くなら基準はどこ?「個人の証券取引はオンライン証券を選ぶ理由」

証券会社でしか出来ない取引をする必要性が生じたとしましょう。早速、証券会社に口座を開きたいところですが、証券会社にはオンライン証券会社と、対面型の証券会社があります。さて、どちらを選びますか。


預かり資産は対面型証券会社の方が上

オンライン証券会社がこの世に出てきたのが1998年前後でした。それ以前の証券会社といえば、証券会社の店頭に行って注文を出すか、自分の営業担当者に電話を入れて、株式や債券、投資信託などの売買注文を出すのが一般的でした。

それがインターネットの普及によって、オンラインで株式などを売買できるオンライン証券会社がどんどん参入し、加えてバブル崩壊後の株価下落による株式取引の低迷が重なり、証券業界の業界地図が大きく変わりました。現在は、店舗を構えている対面型証券会社とオンライン証券会社に二分されますが、このうち後者については、スマートフォンでの取引をメインとしたスマホ専業証券会社も含まれます。

とはいえ、顧客から預かっている資産の規模からいえば、まだ対面型証券会社の方が上です。オンライン証券で最も大きなSBI証券の預かり資産が12.9兆円であるのに対し、野村證券が104兆円、大和証券が59.8兆円、SMBC日興証券が54.8兆円、みずほ証券が42.3兆円という具合です。

ただ、上記の数字はあくまでも直近のものであり、これから先はどうなるか分かりません。というのも、対面型証券会社の顧客は基本的に高齢者が中心なので、積極的に株式を売買する人は少数ですし、預かり資産の一部は徐々に高齢者の生活費として取り崩されていくからです。

さらにいえば、いずれは子供や孫に相続されていきますから、対面型証券会社からオンライン証券会社、あるいは他の金融業態に資金が流出していくことも考えられます。10年後、20年後にはオンライン証券会社が、預かり資産ベースで対面型証券会社を凌駕する日が来るかも知れません。

オンライン証券会社を選ぶ理由

正直なところ、これから証券会社に口座を開設するのであれば、オンライン証券会社で十分と言えます。売買手数料などのコストが割安ですし、投資信託をはじめとして取り扱っている商品の種類も実に豊富です。

前回、証券会社でなければ投資できない商品のひとつとして外国株式を挙げましたが、この点についても対面型証券会社とオンライン証券会社を比較した場合、明らかに後者に軍配が上がるので、やはり証券会社に口座を開くならオンライン証券会社が良い、ということになります。外国株式に関連した情報を豊富に提供しているかどうか、外国株式の取扱銘柄数はどの程度なのか、コストはどうなのか、迅速な売買発注・約定は可能かといった点を比較して、選べば良いでしょう。

また、もうひとつ証券会社を選ぶ際に重要な点があります。それは、証券会社の経営状態です。

証券会社の数は、この10数年で結構減りました。2008年12月時点で、日本証券業協会の会員者数は322社でしたが、2021年3月現在のそれは268社です。合併で減った分もありますし、廃業を決断したところもあります。

もちろん株式や債券、投資信託などの有価証券はすべて分別管理が徹底されているため、保護預かりにしてもらっている証券会社が廃業や倒産したとしても、これら投資家の財産は保全されます。

ただ、廃業や倒産した証券会社の業務を引き継ぐ、別の証券会社が現れない場合は、他の証券会社に口座をつくってそこに有価証券を移管させたり、投資信託の場合は繰上償還を余儀なくされたりします。それはそれで手間なので、相応に経営規模が大きいところに口座を開いた方が無難でしょう。

ちなみに「地場証券」といって、地方の特定地域を営業エリアとしている小規模な証券会社は、一段と生き残りが厳しくなります。今後、地場証券については証券業から撤退し、投資アドバイザーなどへの業態転換を図るところが増えそうです。

対面型証券会社の営業担当者は投資のプロではない

個人の証券投資はオンライン証券会社で十分事は足りるのですが、オンライン証券会社の唯一のデメリットというか、足りない部分は、すべて自分で判断しなければならないことです。

しかし、対面型証券会社の営業担当者が投資のプロかというと、そこはいささか心許ない部分があって、単なる販売員に過ぎない人もいます。

ですから、「プロのアドバイスを受けたい人は対面型証券会社が適しています」とは言いにくいのですが、「何か分からないことがあった場合、質問できる人がいると安心だ」という人は、対面型証券会社に口座を開いた方が良いでしょう。

ただし、頻繁に営業があることは覚悟しておく必要があります。これを煩わしいと思う人は、独学で投資の勉強をするか、投資に詳しい友人・知人を見つけるかして、自分の投資の知識を増やしながら、オンライン証券会社で取引することをお勧めします。

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