NASAが探査予定の小惑星「プシケ」予想ほど金属の含有量は多くない可能性

【▲ 小惑星プシケを描いた想像図(金属と岩が大まかに分かれていると想定)(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/Peter Rubin)】

アリゾナ大学のDavid Cantillo氏らの研究グループは、ほとんど金属でできていると考えられている小惑星「プシケ」(16 Psyche)について、従来の予想と比べて金属の含有量がやや少なく、平均密度も予想より低い可能性を示した研究成果を発表しました。

■実際のプシケはラブルパイルに近い小惑星かもしれない

プシケは火星と木星の間にある小惑星帯に位置する小惑星で、平均的な直径は226kmとされています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」がサンプルを採取した小惑星「リュウグウ」の直径が約900mとされているので、同じ小惑星といえどもプシケはリュウグウのおよそ250倍の大きさがあることになります。

冒頭でも少し触れたように、プシケはニッケルといった金属が豊富な「M型小惑星」に分類されています。その正体として、かつて太陽系に存在していた惑星のコア(核)がむき出しになった姿である可能性があげられています。

初期の太陽系ではふわふわとした微小なが集まって微惑星を形成し、微惑星が集まって原始惑星が形成されたと考えられています。溶けた微惑星や原始惑星の内部は軽い岩石の成分が上へ、重い金属の成分が下へと分かれる「分化」と呼ばれるプロセスが進み、岩石成分によってマントルが、沈んだ金属成分によってコアが形成されたとみられています。

プシケは内部の分化が進んだ初期の惑星に別の天体が衝突したことで外側が失われ、内側の金属成分でできたコアだけが残った天体なのではないか、というわけです。惑星のコアについての知見が得られる可能性があることからプシケは注目されていて、アメリカ航空宇宙局(NASA)はプシケを観測する小惑星探査機「Psyche」(英語では「サイキ」)の打ち上げを2022年に予定しています。

【▲ 小惑星探査機「Psyche(サイキ)」を描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/Peter Rubin)】

今回、研究グループはプシケ表面のレゴリスを模した試料を実験室で作成し、実際に観測されたプシケの可視光線と赤外線のスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)に一致する組成を調べました。その結果、研究グループはプシケの組成金属82.5%、鉄の少ない輝石7%炭素質コンドライト10.5%プシケの空隙率(土壌や岩石などに含まれる隙間の体積割合)を約35%と推定しています。

これは従来の予想と比べて金属の含有量が少なく、空隙率が高い(内部のすき間が多い)ことを意味するといいます。Cantillo氏は、プシケが炭素質コンドライトを含むより一般的な小惑星と衝突したことがあり、その際に生じた破片が表面に堆積した可能性を指摘しています。

また発表では、プシケがむき出しになった惑星のコアそのままの姿ではなく、空隙率が50%以上と推定される小惑星「ベンヌ」(NASAの小惑星探査機「OSIRIS-REx(オシリス・レックス)」がサンプルを採取)やリュウグウのように、実際には瓦礫が集積してできたラブルパイル天体に近いかもしれないと言及しています。NASAのサイキミッションが計画通り進めば、2026年にはプシケの真の姿が明らかになるはずです。

【▲ 小惑星プシケを描いた想像図(金属と岩が細かく入り混じっていると想定)(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU/Peter Rubin)】

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU
Source: アリゾナ大学
文/松村武宏

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