山下泰裕会長を直撃! 死去したJOC経理部長は“裏金”に関与したか 

直撃に応えた山下泰裕会長

謎は深まるばかりだ。日本オリンピック委員会(JOC)の経理部長男性(52)が電車にはねられて死亡した件で、遺族と面会した山下泰裕会長(64)は自殺ではなく事故死だったことを主張。警察の捜査に不信感を募らせるとともに、男性の死を五輪招致の“裏金”と結び付けた一部報道にも憤慨した。山下会長に真意を直撃した――。

JOCを揺るがすショッキングな出来事から3日が経過しても、混乱は収まる気配がない。男性は7日午前9時20分ごろ、東京・品川区の都営浅草線中延駅で普通電車にはねられ、搬送先の病院で死亡。当初、男性がホームから線路に飛び込む姿の目撃証言もあり、警察は自殺とみて調べていた。

しかし、遺族から詳しい話を聞いた山下会長は「ご遺族は警察が自殺と認定していることに納得していない。事故死ではないかと思われている」とした上で「(報道で)飛び込んだって書いていますけど、ちゃんと警察に確認してほしい。頭の側面にしか(車両が)当たっていない。飛び込んだっていうのと全然違う」と疑問を呈した。

ホームに飛び込んだと証言した目撃者は先頭車両付近にいた駅員だったといい、山下会長は「(男性は)いつも後ろから2両目に乗っていた。一番前とはすごい距離がある。例えば(携帯)電話をしてフラッとして当たったことだってあり得る」と“自殺説”を完全否定した。

警視庁は「電車事故があったことは事実。普通電車に轢過(れきか)され、原因については捜査中。ここから先の個別の対応はしていない」としているが、山下会長は「奥様も娘さん2人も自殺だと思っていない。ホームまで全部見られて、こういった理由で事故死だと思っている、と。どうしてそう(事故死と)思われているかも我々は聞いています」と話した。

また、死亡する数日前に食事した関係者によると、男性は普段と変わらない雰囲気で、夫婦仲も非常に良く、自殺する理由が一つも見当たらないという。

もう一つ、遺族を苦しめているのが“五輪とカネ”に結び付けた報道だ。10日発売の週刊文春は「JOC経理部長“五輪裏金”と補助金不正」のタイトルで詳報。山下会長は「事実が大きく湾曲して書かれている。何かを隠していると国民に思わせるような、悪意に満ちている。断じて許せない行為」として抗議文を出すことを示唆した。籾井圭子常務理事も「記事がいかにデタラメか」と怒りをあらわにしている。

文春報道に限らず、ネット上などでも「男性が五輪招致のカネに関わっていた」「不正を知っていたのでは?」などと噂が飛び交っているが、招致メンバーの一人は「そもそも招致とJOCの財務は独立している。組織委も同様。今回の死をカネに結びつけるのは無理がある」と証言する。そこで、10日に開かれたJOC理事会を終えて帰路に就く山下会長を直撃。「亡くなった男性は不正に関与していたのか?」との問いに「そんなことはあり得ない。全くないです」と男性の潔白を断言した。

五輪直前、経理部長の死――。様々な要素が絡み合い多くの憶測を呼んでいるが、いまだに真相は闇の中。果たして、謎が完全に解ける日は来るのだろうか。

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