【社説】男性の育休 職場の風土から変えよ

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 父親が育児休業を取りやすくする改正育児・介護休業法が、今国会で成立した。「出生時育児休業(男性版産休)」の新設に加え、企業に対し、従業員一人一人に育休取得を働き掛けるよう義務付ける。

 男性が育児のために休業しやすくするよう法で促すことは評価できる。だが実際の取得につながるかどうか。実効性を持たせるためには、職場の意識変革など、なお大きな課題が残っていることを忘れてはならない。

 新設される「男性版産休」は育休の特例措置だ。女性の産後休業に合わせ、子どもの誕生から8週間以内に計4週分の休みを取れる。2回に分けて取ることもできる。

 この時期の女性は、産後うつの発症リスクが高いとされる。体調が回復しないまま、昼夜を問わない授乳やおむつ替えなど育児に伴う心身への負担は大きい。父親が育児や家事を担うことは、とても重要である。

 また来年4月から、企業には従業員への育休取得を働き掛ける義務が課せられる。現在の努力義務から引き上げる。男女問わず育休制度について説明し、取得するかどうか確認しなければならない。従わない場合には、国が社名を公表できる。再来年4月には、従業員千人以上の大企業に、社員の育休取得状況公表も義務付けるという。

 共働き世帯が増えてなお、7%台で低迷する男性の育休取得率を、政府はなんとか引き上げたいのだろう。ただ現実的にどこまで進むかは未知数だ。

 鍵となるのは、企業風土の改善など職場の取り組みではないか。厚生労働省が昨年、男性労働者を対象に実施した調査では、過去5年間に勤務先で制度を利用しようとした人の26.2%が嫌がらせを受けた経験があると答えているからだ。人事上の不利益をほのめかされるなど上司による妨害が多く、嫌がらせを受けた約4割は育休取得を諦めたという。

 そもそも制度の利用以前に、育児は女性が担うものという社会の風潮や、男性が「育休を取りたい」と言えない空気が職場にないだろうか。

 2019年度の男性職員の育休取得率が92.3%という千葉市の取り組みは、参考にすべきだろう。千葉市では17年度から上司が部下に「なぜ育休を取るのか」ではなく「なぜ休まないのか」と理由を聞き取る調査を始めた。市長が幹部会議でも繰り返し取得を促し、管理職も積極的に働き掛けたという。

 職場に「取得が当たり前」という雰囲気が醸成されれば、男性も申し出やすくなる、ということなのだろう。

 企業にとっては、従業員が休めば、仕事のやりくりなどの課題が生じることは理解できる。しかし、子育て支援に力を入れる組織となることで、新たな人材確保につながるといった企業側のメリットもあるはずだ。

 男性が育休を取ることの重要性を職場全体で理解し、日頃から業務の見直しや人員配置の工夫などにも取り組んでほしい。

 もちろん、大企業だけ進めても意味がない。代替要員の確保が難しい中小企業への助成など支援策にも、政府は知恵を絞ってもらいたい。官民が手を携え、誰もが安心して仕事と子育てを両立できる環境整備をさらに加速させる必要がある。