「ザ・トリオ Vol.3」(1956年・Contemporary) 日本の奏者育てたホーズ

平戸祐介のJAZZ COMBO・3

©株式会社長崎新聞社

「ザ・トリオ Vol.3」のジャケット写真

 木々の緑が快晴に映え、空気がすがすがしく感じられる5月。窓を開け換気の良い部屋で、朝からジャズを聴くのはいかがでしょう。今回はそんなシチュエーションにぴったりのアルバム「ザ・トリオ Vol.3」(Contemporary)を紹介します。
 この作品は米ロサンゼルス生まれのピアニスト、ハンプトン・ホーズ(1928~77年)が56年に残した名盤。「西海岸ジャズ」特有の爽やかなサウンドが楽しめます。
 ところで、ホーズは日本の戦後のジャズシーンに、大きな影響を与えた演奏家の1人です。ホーズは52年から2年間、米進駐軍に配属されていました。その期間、ホーズは日本の若手ジャズミュージシャンの育成に一役買います。当時の日本は占領下に置かれながらも、さまざまな分野で新しいカルチャーが生まれようとしており、ジャズも黎明(れいめい)期を迎えていたのです。
 当時はレコードプレーヤーが高価だったため、日本のジャズミュージシャンは、ジャズ喫茶に入り浸ってレコードを聴いていました。本場の音に耳をそばだてて、何とか自分のプレイに結びつけようと必死だったようです。
 ホーズはそうしたミュージシャンらと連日怒濤(どとう)のセッションを繰り広げ、本場のジャズを教えました。指導を受けていたのはピアニストの守安祥太郎さん、秋吉敏子さん、サックスの宮沢昭さん、渡辺貞夫さんら。今では日本ジャズ界のレジェンドと呼ばれている方々です。その面々から「ウマ(馬)さん」の愛称で親しまれたホーズ。現在の日本のジャズシーンがあるのは、彼のおかげと言っても過言ではないと思います。
 ホーズも日本のミュージシャンから音楽的な刺激を受けたのでしょう。帰国後すぐにこのアルバムを含む「ザ・トリオ Vol.1~3」シリーズの制作・録音に取り掛かりました。シリーズ全編でスタンダードジャズが収録されており、ジャズ入門編としてもおすすめです。緑色のワニが印象的に描かれた「ザ・トリオ Vol.3」のジャケットはジャズアルバムの中で、5本の指に入る秀逸なデザインだと思います。
 ホーズのリラックスした演奏を聴きながら、往年の日本ジャズシーンに思いをはせる-。そんなロマンあふれる時間を提供してくれる1枚です。
 (ジャズピアニスト、長崎市出身)

この記事はいかがでしたか?