美容室展開のアルテサロン、コロナ禍で一気にデジタルシフト

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アルテ サロン ホールディングスは、フランチャイズの美容室チェーンを展開する企業だ。美容室「Ash(アッシュ)」や「NYNY(ニューヨーク・ニューヨーク)」、カット・カラー専門店「Choki Peta(チョキペタ)」、開業支援の「スタイルデザイナー」など、グループ店舗数は330以上、従業員は3000名を数える。2004年には東京証券取引所JASDAQに上場している

各グループ企業は営業も別々で、個別に運営されているが、バックオフィスの業務である総務や経理などの業務は、本部が一括して請け負い、支援している。

例えば、産休の取得、交通費精算などは本部が行っており、以前はこれら業務の主な連絡方法は電話やFAXなどアナログが主流だったという。各従業員への連絡は、店舗に1台ある共有PCを介して行っており、基本的に店長が内容を口頭で伝えていた。そのため、個別従業員への連絡漏れも発生していたという。

ただ、昨年4月の新型コロナウィルスによる緊急事態宣で店舗は休業。従業員は自宅待機となり、従業員と直接コミュニケーションを取らなければならず、早急に業務をIT化していく必要に迫られた。

そこで同社はLINE WORKSを導入し、各従業員が持つスマートフォンを介して直接、連絡や各種申請が行える環境を整えた。

「これまではコンテストやセミナーの案内も共有パソコンで受け取るようにメールしていましたが、ツールを入れたことによって個別に連絡できるようになり、例えば、入社3年目の人が対象の講習であれば、その人だけに送るといったこともできるようになりました。講習は年間何百回も開催していますが、中にはそれを知らない人もいたと思います。LINE WORKSの導入によってそれがなくなりました。これは、見えない部分のメリットだと思います」と語るのは、アルテサロンホールディングス 取締役 常務執行役員 CMOの大山高寛氏だ。

また、4月は新入社員が入社する時期だか、その教育に関してもIT化を進めた。

同グループでは、毎年200名程度の新入社員が入っており、これまで最初の数日は体育館などを借り、集合研修形式で技術指導を行っていた。しかし、緊急事態宣言でそれができなくなり、昨年からLINE WORKSやZoomを利用したオンライン研修に切り替えた。Zoomは役員会議など社内会議にも活用しているという。

研修動画は都度ストックすることにより、いつでも従業員が見られるようにしたほか、誰がどの動画を閲覧したのかもわかるようになっているため、あまり閲覧していない人には、動画見て技術を高めていくように指導しているという。

「これまでは集合研修として同じものを毎年やっていましたが、動画で残していけば、それが資産となります。そういう意味で、一番デジタルシフトできたのが、教育の分野かもしれません。教育が遅れると、一人立ちするのも遅れ、給料も上がっていかず、それが辞める原因にもなります。教育は会社の売上や利益にも大きく影響するので、早急な対応が求められていました。動画コンテンツを一番扱っているのは教育担当なので、動画配信を始めて1年が経ち、社内で動画コンテンツに関する一番のプロフェッショナルになっています」(大山氏)

このように、同社は新型コロナウィルス対応を機に、一気にIT化を推し進めた。

「変えるときには一気に変えないと、数年したらもとに戻る可能性があります。なるべく社員の人に利便性を感じてもらい、デジタル化が定着していけるようにしていきたいと思っています」と大山は話す。

そして、今後、同社がIT化に力を入れていこうとしている領域がマーケティングだ。同社はこれまでも、顧客属性や来店頻度、カット内容などをデジタルデータとして10年ほど蓄積しており、店舗では、それをダイレクトマーケティングに活用していた。例えば、3カ月来店していない顧客に対してはメールを送信するなど、ある程度自動化されていた部分もあったという。

「美容師さんの中には、カット技術さえあればお客さんは来てくれると思っている人もいますが、美容師さんがインスタやブログなどでお客さんを呼び込むことを能動的にやっていかないと、売上は伸びていかないと思います。以前であれば、駅前で店舗の立地が良よければ自然とお客さんが来てくれる面もありましたが、それが徐々に効かなくなり、新型コロナウィルスでそれがより鮮明になりました。今後は美容室自身が戦略をもって集客していかないと、顧客は増えないと思います。そのため、各店舗にマーケティング担当を置く活動をしています。その人には店長と同じ権限を与え、戦略を決めて実施できるようにしており、関西では成果が出始めています」と、大山氏はマーケティング活動の重要性を語った。

そのため、本部では他店舗のマーケティングの成功事例を、毎日ように配信しているという。

「コロナ禍になって、ホームページを見られるお客様の数は、それまでの2倍くらいになりました。増えたお客様は店舗がコロナ対策をしているかを気にされています。これまで、電車で青山や原宿の美容室に行っていたお客様が、地元の店舗に行こうとしており、そのために店舗のコロナ対策を確認されています。これに対しては、しっかり本社で対応していかなければならないと思っています。コロナ禍で、既存の集客サイトだけでは効果があまり期待できなくなってきているので、それに代わる費用対効果の高い方法をいかに早く見つけていくがが、今後の勝負だと思います」(大山氏)

社内の問い合わせBot

リピーターに関しては、各店舗や各美容師の役割が大きいので、本部としては、新規顧客の獲得をよりサポートしていくという。

「店舗数が多いのが弊社の強みでもあるので、今後はその強みを活かして、プラットフォームへの投資を行っていきたいと思います。以前、PayPayさんと一緒にポイントキャッシュバックキャンペーンを行いましたが、新規顧客に対するタッチポイントが増えました。こういったことは、300店舗あるうちでしかできないことだと思っています。個人単位、店舗単位ではできないことは、本社でしっかりサポートしていこうと思います」(大山氏)

そのほか同社では、社内の問い合わせに関しても、AIボットを利用し、自動回答するように変更、大きな成果を挙げている。問い合わせ数は、半年間で13000回以上に上ったという。

「社員の代わりにAIボットが回答することで、半年で1000万円程度の経費は削減できていると思います。また、これまでの電話による問い合わせの場合、席を外していた場合は折り返し対応になり、人によって回答する内容が異なるといった課題もありましたが、それも解決できたと思っています」と大山氏は語った。