上越市出身・パラ競泳出場 石浦智美選手 4度目の挑戦で実現

「金」と世界記録目指す

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 東京パラリンピック(8月24日~9月5日)の競泳で、上越市出身の石浦智美選手(33、伊藤忠丸紅鉄鋼)が視覚障害S11クラス女子50メートル自由形で派遣基準記録を突破し、日本代表に内定。東京オリンピック・パラリンピックの上越出身者内定第1号となった。4度目のパラリンピック挑戦で出場をつかんだ同選手に、今の思いやこれまでの経緯、本番への抱負などをZoom(ズーム、ウェブ会議システム)で尋ねた(取材日、5月28日)。

 同選手は、3歳から上越市藤巻の上越正和スイミングスクールで水泳を始め、10歳から本格的に競技を開始。同市立北諏訪小を卒業後、新潟盲学校中学部から筑波大附属視覚特別支援学校高等部普通科、恵泉女学園大人文学部英語コミュニケーション学科に在籍した。三菱樹脂(現・三菱ケミカル)に入社した後、アスリート転職で2017年1月から伊藤忠丸紅鉄鋼(本社・東京都中央区)に勤務しながら、主にナショナルトレーニングセンター(東京都北区)で練習を積んでいる。

WPSワールドシリーズシンガポール大会から、中央でスタートの構えが石浦選手(2019年5月、伊藤忠丸紅鉄鋼提供)

 ―代表内定をつかみ、今の心境はいかがですか。

 タイム(世界記録)を狙っていたので、ちょっと残念ですが、派遣タイムを突破して代表に入ることができたので、ホッとしています。LINEやメッセンジャーなど、たくさんのメッセージをお寄せいただき、うれしい限りです。

 ―水泳を始めたきっかけを教えてください。

 小さい頃からぜん息気味で病弱だったので、病院の先生から水泳をやってみたらと勧められ、3歳から上越正和スイミングスクールに行きました。兄2人も水泳をやっていました。週2~3日で、夏季や冬季教室など、頻繁に通っていました。
 小学校の時は見えていたので、走り回って、みんなと同じようにレッスンを受けていました。障害があると断られることが多いですが、みんなと一緒に指導いただけたことは、とても感謝していますし、それがなければここまで来ることができませんでした。学校の体育の授業では、視野が狭く、球技系は難しかったですが、水泳は思い切ってできます。だんだんと見えづらくなりましたが、水泳だけはハンディがなく、心の支えでした。

 ―目の症状はいつからでしょうか。

 先天性緑内障、無虹彩症の合併症です。小さい頃は文字も見えていました。北諏訪小では教科書をコピーして読んだり、拡大読書器で勉強していました。進行性の病気で、今は光の明るさが分かるぐらいです。いずれ全く見えなくなる病気です。競技種別は視覚障害S11で、一番重いクラスです。光を通さないゴーグルを着けて泳ぎます。

 ―パラリンピックへの挑戦はいつからですか。

 挑戦を始めたのは(2008年の)北京大会からです。大会ごとに選考基準が異なっているので、あと一歩というのは一概に言えませんが、北京大会は補欠1位でした。ロンドン大会は出場枠的には参加可能でしたが、競技団体の判断により、8位入賞ラインまでの選手派遣となり、出場枠3枠は他国に返上され、そのうちの1人でした。リオ大会から派遣基準記録が設定されましたが、あと0・3秒足りずに補欠1位。今回は派遣基準を切って選考されました。

 ―泳ぎのどの部分が得意であり、逆に改善点でしょうか。本番にどのようにつなげていきますか。

 ドルフィンキックが得意です。飛び込んで入水してからの15メートル、ドルフィンキックをしながらスピードを落とさず、泳ぎ出しに入っていけるのが強みです。全盲クラスは、コースロープの兼ね合いで(当たらないように)、早く浮き上がる人が多いのですが、私は回数を数えて、15メートルぎりぎりまで進みます。今回(の東京パラ)も圧倒的に武器になると思っています。
 スタートの飛び込み動作、レース後半の呼吸数の多さ、また、呼吸動作のモーションが大きかったりするので、細かいところを改善していきたい。そうすることで目標とする金メダルや世界記録に近づけるかなと思っています。世界記録は30秒22。ベストは3月の大会で出した31秒03(取材後、6月6日のレースで30秒74の日本新記録を樹立しベスト更新)。前半のタイムはいけると思うので、3月の後半のタイムを出せれば、狙えるタイムだと思っています。コースロープに当たってもタイムを出せるように、残り3カ月間シミュレーションしていきます。日程的な兼ね合いもありますが、リレーなどにも出場すると思うので、チームに貢献できればと思います。

 ―今の練習や勤務の状況はいかがですか。

 私自身のコロナ予防対策や、サポートしてくれる人の安全のためには、(移動などがすいている)日中に練習しないとなりません。感染対策を万全に施し、練習拠点であるナショナルトレーニングセンターでは、週に2回PCR検査の実施が義務付けられています。2017年に現在の会社にアスリート転職し、勤務や練習環境などに支援や配慮をいただいています。

 ―上越市民にメッセージをお願いします。

 地方の出身者がオリパラ関係者で参加するというのは少なく、遠い話に感じるかもしれませんが、私が出場することで、上越の方々に少しでも身近に感じてもらえれば。表彰台が見える位置にいると思うので、メダルと世界記録を皆さんに見せられたらと思います。将来オリンピックやパラリンピックを目指してくれる子どもたちが出てきてくれればいいなと思って、泳ぎたいです。私は4度目の挑戦ですが、諦めずにこつこつ頑張れば叶えられるよというのをお見せしたい。パラリンピックを見ていただくことで、心のバリアフリーや共生社会につながっていければいいと思います。

 ―今後の予定はいかがですか。

 6月6日に知的障害者の日本選手権で代表チームのお披露目があり、レースも行われます。7月18日から、パラの水泳チームは長野県で合宿、7月末の一般の長野県選手権に出場して本番を迎えます。大会数が限られているので、タイムを出していきたい。

Zoom取材に答える石浦選手

 ◇主な国際大会の実績 2010年度IPC世界選手権大会50メートル自由形9位、100メートル背泳ぎ6位、アジアパラ競技大会100メートル背泳ぎ3位、2013年度IPC世界選手権大会50メートル自由形9位、100メートル背泳ぎ7位、2014年度アジアパラ競技大会50メートル自由形3位、2018年度アジアパラ競技大会100メートル自由形4位、2019年度世界パラ水泳選手権大会50メートル自由形5位、100メートル背泳ぎ5位など