まさかのツンデレ? 山口俊を電撃復帰に導いた巨人の巧みな “交渉テクニック”

巨人復帰が決まった山口俊

Vへの使者となれるか。巨人と来季までの2年契約を結んだ山口俊投手(33)が11日に入団会見を行った。今季推定年俸は3000万円プラス出来高で背番号は「99」。メジャー再昇格の夢を断念し、5日の帰国から10日の正式発表まで1週間足らずのスピード決着はいかにして実現したのか。その舞台裏では、球団側の「ヒット&アウェー」とも「ツンデレ」ともつかぬ巧みな〝交渉術〟が繰り広げられていた。

身も心もすでにGの一員となっていた。リモートによる会見に出席した山口は、カラフルだった頭髪を黒に染め直すなど〝巨人仕様〟となり「肩、ヒジ、体の状態は万全なので。チームが勝てる投球をすることが一番だと思っています。優勝というところが一番チームの目標になると思いますし、何とか力になれるようにやっていきたい」と力強く意気込みを語った。

SFジャイアンツ傘下の3A・サクラメントを退団し、日本球界復帰を表明したのが今月3日。5日に帰国してから正式発表までに要したのは、わずか6日間だった。もちろん、山口自身が「2年前のポスティングの際も快く送り出してくれた」と恩義を感じていたのは間違いない。ただ、球界関係者の話を総合すると巨人側も長期にわたって〝ヒット&アウェー〟と〝ツンデレ〟を続けてきたという。

最初のアタックは、山口がブルージェイズから戦力外となった2月時点。その際は山口側の「米国でもう一度(メジャー昇格の)夢を追いたい。新しいチームを探す」との意向を尊重し、球団側が帰国を勧めることはなかった。

山口サイドとの連絡を断ち、次に訪れた転機は5月上旬。実はこの当時「山口の心が折れかけている。本人が帰国を選択肢に入れ始めた」との情報が球界内の一部にもたらされていた。球団側はこの情報をキャッチし、山口が5月中にメジャー昇格ができなければ、オプトアウト(契約破棄)できる条項が盛り込まれていることも把握した上で、今度はこう突き放した。

「5月いっぱい挑戦しろ」(大塚球団副代表)。全力で挑んで自らの限界を悟り、夢の続きやメジャーへの未練を完全に断ち切らせる――。加えて「もし山口がメジャーに登録されれば(巨人復帰には)多額のトレードマネーがかかる」(球団関係者)との警戒心もあり、再び連絡を遮断。そして、山口は今月に入ってメジャーへの夢に踏ん切りをつけて帰国し、巨人側と時間をかけて交渉する選択肢が生まれるわけもなかったというわけだ。

故障者続出で苦しむチームでは、この日のロッテ戦(ZOZOマリン)から坂本が約1か月ぶりに戦列復帰。さっそくのマルチ安打で5―1の勝利に貢献し、引き分けを挟む連敗を4で止めた。原監督も「やっぱりいい風を吹かせてくれたという感じがしますね」と安堵感をにじませたが、首位・阪神とは6ゲーム差のまま。山口の一軍合流は先になるが、猛虎追撃の切り札となるのか見ものだ。

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