映画『名も無い日』生配信舞台挨拶に永瀬正敏、オダギリジョー、金子ノブアキ、日比遊一監督が登壇 「大切な誰かを失った悲しみは乗り越えるものではなく、そっと心に生き続け、しっかり向き合うもの」

愛知県名古屋市発信の映画『名も無い日』の全国公開初日生配信舞台挨拶付き上映会が、さる6月11日(金)にスペースFS汐留で行なわれた(無観客で、会場から全国27館の劇場に生配信)。 本作品の監督であり、カメラマンでもある日比遊一に起きた実話を元に描かれた本作。舞台挨拶には日比遊一監督をはじめ、出演者の永瀬正敏、オダギリジョー、金子ノブアキが登壇し、本作への思いを配信を通して、各地の劇場に駆けつけたファンにアピールした。

撮影から約3年の歳月を経て、ついに全国公開を迎えた気持ちを、永瀬は

「あっという間であり、無事に公開できた気持ちもあり、心の中がグルグルしていますね」

とコメント。

一昨年前の初号試写を見たオダギリは

「そこで見て以来なので、ほぼ内容を忘れている」

と笑いを誘い、

「だからこそ、もう一度映画館で見たいですね。映画館は大変な状況が続いていますが、映画館でしか得られない経験はあると思うし、ぜひスクリーンで見てほしいですね」

とアピールした。

また、金子は

「現場の記憶が鮮明に残っているので、時間が経った気がしない」

と心境を明かし、

「こうやって、やっと見ていただけるのがシンプルにうれしいです。安心もしていますし、何かが心に残って、前に進むきっかけになればという願いもあります」

と話していた。

実の弟の死を題材にした本作について、日比監督は

「弟が死んで9年が経ち、構想・原案から6年、撮影から3年が経ちました。もうダメだなと思うときも、ひと言で言い表せない大きな支援をいただき、這いつくばって完成させることができた」

としみじみ。

「今日は有志の皆さんの思いも背負って、ここに立たせてもらっている。映画はお客さんに見ていただき、初めて完成するので、今日『名も無い日』という作品が独り立ちできて、誇りに思いますし、感動もしております」

と感無量の面持ちだった。

永瀬が演じる長男は、日比監督がモデルになっており

「現場で疑問点があれば、すぐそこに監督がいらっしゃる心強さがあった。この物語を映画化するのは、監督自身、かなりの覚悟があったはず」

と回想。撮影は日比監督の実家などで行なわれ、オダギリは

「実際に生活されていた空間ですので、軽い気持ちでは入り込めないし、ご実家での撮影だからこそ、いろいろな力を与えてくれた。監督が強い覚悟で臨んだ作品なので、『すべて背負いたい』『自分ができることを全身全霊でやらなければ』という強い気持ちで臨んだ」

と振り返った。 また、金子は

「映画の撮影というより、言葉が見つからず、記憶の中にいた感覚。現場にいる監督の姿を思うだけで、こみ上げてくるものがある。この作品以前/以降で意識も変わったし、貴重な経験でした」

と強い思い入れを示した。

三兄弟を演じた感想については

「オダギリさんの背中越しのお芝居は、こっちにもビンビン伝わってきたし、金子くんは金子くんで、涙を流すシーンなんかは、何か心震えるものがあった。二人とも現場に“心”を持ってきてくれる役者さん」

(永瀬)、

「がっつりお芝居するのは、お二人とも初めてですが、いい感じの兄弟だなと。自分のことながら、このキャスティングがしっくり来ると実感していた。芝居を交わせるうれしさがあり、最高の答えを出したいという気持ちもあった」

(オダギリ)、

「上に兄弟がいないので、現場では僕にもお兄ちゃんができたって思えて『甘えちゃえ』と身を任せることができた。身を裂かれるような悲しいシーンもあるが、でも基本的には優しい時間が流れる、穏やかな現場でした」

(金子)。日比監督は

「夢のような三兄弟。感謝の一言しかありません」

と話していた。

舞台挨拶の締めくくりに、永瀬は

「いろんな人のいろんな気持ちが詰まった作品。最後には光があると思っていますし、天国の弟さんにおめでとうございますと伝えたい」

と挨拶。オダギリは

「いろんなものを受け取り、感じることできる作品なので、いろんな方にも見てほしい」

と改めてアピールし、金子は

「すばらしい作品に参加させていただき、光栄でしたし、忘れることはないと思います。監督の覚悟でありますし、ものすごい力を持った作品なので、ぜひ広まってくれれば」

と期待を寄せた。

日比監督は

「私の身に起こった悲しい、暗い物語を映画にしようとは思わなかった。大切な誰かを失った悲しみは乗り越えるものではなく、そっと心に生き続け、しっかり向き合うもの。そうすることで、次の一歩を踏み出せる…そういう映画だと思います。セリフが少ない、凝縮された俳句のような映画なので、大切な人と一緒に、(映画の)余白に人生を重ね合わせてもらえれば」

と全国の映画ファンにメッセージを送っていた。

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