「医療的ケア児」支援法成立 支援者ら、積極的な施策展開を求める

 日常的に人工呼吸器装着やたん吸引などが必要な子ども「医療的ケア児」と家族を支援する法が11日成立した。長崎県内にも約170人(19歳以下)がいると推計され、支援者や当事者は一定評価する一方、県や市町には具体的な施策を積極的に展開するよう強く求めた。
 障害児の支援施設「みさかえの園あゆみの家」(大村市)の副施設長で、県内で多職種連携の勉強会を開いている岡田雅彦医師は「国が医療的ケア児支援の理念を掲げたことは有意義なこと」と歓迎。「地域社会が具体的にどのように行動するかが今後の課題であり、行政を中心に多職種が一層連携できるよう努めたい」と話す。県は本年度から実態調査に着手し、災害時の個別支援計画策定や地域の支援体制構築などに活用する方針だ。
 ケアが必要な子どもの母親で、県や長崎市に通学支援を求めている「県障害児・者と家族の生活を支える会」の仰木真樹会長は「人工呼吸器を付けている子どもが学校で授業を受けられるようになればすごい」と期待する。ただ「母親が毎朝マイカーで学校に連れて行けるだろうか。運転中に子どもに異変が起きた時、路肩に止める場所も少なく、1人でとっさに対処するのは大変」と述べ、福祉車両に看護師も同乗してもらい通学できるようにするなどの配慮を求めた。
 法はまた保育所や認定こども園に、たん吸引などの適切なケアを提供できるよう、看護師らを配置するよう求めている。県によると、県内の保育所などでの受け入れ実績は、2017年度が4カ所5人だったが、19年度には10カ所11人と増加。だが万一事故が起きた時の責任を考慮し、受け入れをためらうケースも少なくない。
 青山こども園(長崎市)は2年前から医療的ケア児1人を受け入れ、現在は看護師2人体制で対応している。三村豪園長は「医療現場と業務や給与が異なるため看護師の確保は難しいが、法の成立が現状の改善につながってほしい」と述べた。
 15人の子どもをみている訪問看護ステーション鳴見(同市)代表の松島由美看護師は「保育所でも学校でも働いてくれる看護師が少なく、全体的に見れば受け入れは進んでいない」と指摘。「法は成立したが、実際に施策を展開する県と市町の意識がまずは変わらなければならない」と訴えた。


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