世界の核弾頭1万3130発 露警戒で英30発増 長大レクナ推計

世界の核弾頭数

 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)は11日、世界に計1万3130発の核弾頭が存在するとの推計結果を発表した。保有9カ国のうち英国は3月、上限を260発に引き上げると発表し、昨年に比べ30発増加した。レクナは、ロシアのミサイル技術の進展に対する警戒などが背景にあるとみている。
 調査は6月時点。英国は2020年代半ばまでに180発に減らす方針だったが一転、核軍縮に逆行する格好となった。梅林宏道客員教授は取材に「国際世論をはじめ、核拡散防止条約(NPT)の場で非核兵器国などが反発の意思を(英国に)伝え続ける必要がある」と指摘した。
 全体数は昨年比で計280発減少したものの、NPTで核軍縮義務を負う5カ国のうち、ロシア、英国、中国は増加した。全体の9割以上を米ロ2カ国で占めるが、新戦略兵器削減条約(新START)の履行期限だった18年以降の3年間(現在は延長)で、現役の核弾頭を米国は全く削減しておらず、ロシアは逆に149発増強している。中村桂子准教授は、非常に危機的な状況とみて「米ロがより高い削減目標の合意に向けて、リーダーシップをとることが重要」と訴えた。
 核兵器に使われる恐れがある世界の核物質量の推計結果(19年末時点)も併せて発表した。高濃縮ウランは広島原爆2万820発分に相当する1330トン。分離プルトニウムは、長崎原爆8万9650発分の538トンで、昨年比9トン増だった。鈴木達治郎副センター長は「核物質の行方を確実に管理する必要がある」と強調した。
 核弾頭数(図参照)などは各国専門機関の情報や、研究者の文献などを基に推計。データをまとめたポスターを全国の教育委員会や県内の高校などに配布し、平和教育に活用してもらう。

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