【東京五輪】「都から〝安心〟の提示がなかった」 武蔵野市「ライブサイト中止」要望書提出の背景

五輪の開幕が迫る中…

中止せざるを得ない理由とは――。東京五輪・パラリンピックの期間中に井の頭恩賜公園(武蔵野市、三鷹市)で東京都が開設するパブリックビューイング(PV)などを行う「ライブサイト」について、武蔵野市は4日に中止の要望書を都に提出。その背景にある諸事情に迫った。

当事業は「競技会場外にPV会場を設け、競技中継等を通じて競技観戦を楽しみ、大会の感動と興奮を共有できる機会を提供する場」として計画されているが、密が多数発生する可能性もあるため、ネット上では「PVそのものが不要不急」「コロナが感染爆発すると思われるPVはありえない」などの意見が聞かれていた。

そんな中、武蔵野市側は「今は大規模に人を集めるようなイベントはできない」との見方を示しており「代々木公園がワクチン接種の会場になったので、こちら(井の頭公園)についても(見直しを)考えていただければと思っていた。(都から)井の頭公園のライブサイトを『こういう風に運営していくので、安心してください』っていう提示がなく、そのまま運営していくって話だった」と不満をのぞかせた。

東京都の新型コロナウイルス新規感染者数は若干減りつつあるが、依然として高止まりが続いている状態。「今は人流抑制を都も武蔵野市もみなさんにお願いしているところで、こういったイベントができるのか」と疑問を投げかけた上で「会場内だけではなくて、メインアクセスとなる吉祥寺駅からのルートはかなり道の道幅が狭いところが多い。そういうところで密な状態が生まれてしまうということも考えられる」と分析した。

また、有事発生時のリスクに危機感を抱いており「65歳以上の方のワクチン接種がちょうど佳境になる時期だと思う。そのタイミングにライブサイトで熱中症対策などのために、医療従事者の派遣が求められるとさらに地域医療がひっ迫してしまう」と指摘。地域住民の命を優先するためでもあった。

東京五輪の開幕までは残り40日あまり。新型コロナウイルス禍での強行開催に自治体も頭を悩ませているようだ。

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