絶景パノラマ ミヨチョン岳 希少植物息づく森は「島の宝」 頂上の巨大な岩 ノロの聖地から遥か島々を望む

ミヨチョン岳頂上からの眺望。左奥に見えるのが加計呂麻島

〈奄美大島・請島〉

 奄美大島・瀬戸内町加計呂麻島の南にある請島(うけじま)は、島名に由来するウケユリの自生地として知られる。奄美群島国立公園の第2種特別地域のミヨチョン岳(標高356メートル)には、ユリ以外にも希少な植物が生息する。5月末にあった町主催の観察会で山に入ると、かれんな花々が咲き、頂上には絶景が広がっていた。

 同町古仁屋から船で約50分の請島は周囲25キロ。奄美群島の有人8島の中で2番目に小さい。請阿室と池地の二つの集落に約90人が暮らす。

 希少植物の盗掘防止などのため町は入山の届け出と、地元のボランティア団体「みのり会」(10人)の同行を義務付けている。今回は会員4人が約2キロの登山道を案内した。

 「ほら」。山に入ってすぐ益岡一富会長(67)が、高さ約5メートルの岩場に咲くウケユリを指さした。純白の花と赤いおしべの対比が鮮やか。近くにはナゴランが木の幹にへばりつく。紫の横じまが入った白い花びらがかわいらしい。別の場所にはカシノキラン。黄色い花が密集する様子はコンペイトーのようだ。いずれも環境省レッドリストの絶滅危惧種。桜の花が寄り集まったようなサクラランも目を引いた。

 道中はロープの手すりを頼らなければ登れないほどの急勾配も。約1時間かけ、たどり着いた頂上には巨大な岩が鎮座していた。眼下には加計呂麻島や徳之島まで見渡せるパノラマが広がる。

 かつてノロ(女性神職)が神事を行い、島の安寧を祈っていた神聖な場所だという。益岡会長は「森は島の宝。定期的にパトロールをして、美しい自然を残していきたい」と力を込めた。

黄色いコンペイトーのような花が付いたカシノキラン

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