住宅ローン返済を頑張ると老後資金が貯まらない。優先順位で悩むアラフォー夫婦

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、38歳、会社員の女性。会社員の夫と二人暮らしの相談者。現在住宅ローンの繰り上げ返済に力を入れていますが、その分老後資金の貯金ができないといいます。優先順位は? FPの家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

共働きの夫婦です。子どもはおらず、今後も生み育てる予定はありません。相談したいのは、将来の資金のつくり方です。

貯金よりも先にローンを返済し終えることが大切かと思い、住宅ローンの繰り上げ返済に力を入れています。500万円貯まれば200~300万円繰り上げ返済をするようにし、7年間で1,200万円ほど繰り上げ返済をすると、5,000万円の住宅ローンの残金は2,300万円ほどになりました。

ただ、貯まれば繰り上げ返済をしているので、貯金があまりありません。これから毎月順当に返済をしてもあと15年少々でローンは完済できますが、それでもやはり早く完済したいと思っています。貯金をしながら早期完済を目指すには、繰り上げ返済を控えて貯金を優先するようにしたほうが良いのでしょうか。

もう少しで40歳になるので、そろそろ老後に向けて考えなくてはいけないと思っています。住宅ローンがある中ですが、どうすると効率よくお金を貯めていけるでしょうか。

【相談者プロフィール】

・女性、38歳、会社員。夫、41歳、会社員

・手取り月収収入:相談者23万4,000円 夫31万8,000円

・年間の手取りボーナス:相談者約80万円、夫約130万円

・貯金額:300万円

・毎月の支出の目安:51万7,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費(住宅ローン+管理費):17万7,000 円

・食費:8万5,000 円

・水道光熱費:1万7,000 円

・通信費:2万円

・生命保険料:1万3,000 円

・日用品代:1万円

・教育費(夫ジム、妻英会話):2万2,000 円

・交通費:4,000 円

・被服費:2万5,000 円

・交際費:5,000 円

・娯楽費:3,000 円

・こづかい:7万円

・その他:5万5,000 円


FP:住宅ローンの繰り上げ返済のスピードがスゴイですね。毎月さほど大きな黒字は出ていないので、ボーナスから貯めて返済している形でしょうか。では、これから住宅ローンをどうしていくべきか、将来の資金をどう貯めていくべきか、考えてみましょう。

ボーナス頼りになりすぎない暮らし方を

お金が貯まれば繰り上げ返済をして、貯金額を減らすということを繰り返してきたと思いますが、この「貯める」お金のほとんどはボーナスが出所ではないかと思います。

そもそもボーナスは不確実な収入です。昨年のように新しいウイルスの感染拡大で経済が止まるような事態がまた起きると、ボーナスが減額、または支給されないという可能性もあるでしょう。支給されているうちは頼ってしまうというのも悪くはないのですが、できれば毎月の収入から繰り上げ返済をしたり、貯めたりできるお金を作れるようになりたいものです。

そのためには、毎月の支出を把握し、お金をかける必要がある部分、そうではない部分を見極め、支出の仕方をコントロールしましょう。今は2馬力の収入がありますが、この先、年齢を重ねるとどちらかがご病気をし、働けなくなってしまうという可能性も考えておかねばなりません。変化する可能性のある生活に備えるためにも、支出は見直しておく価値があります。

支出を見直して、余剰金が多く出るようになれば、それも繰り上げ返済に回したり、貯金に回したりということも考えられるようになります。

繰り上げ返済はそんなに頑張らなくてもいい

将来の資金作りをしたいけれど、繰り上げ返済もしたいのですね。では、月の生活費の1年分ほどを生活防衛資金として確保できたなら、少し飛躍するかもしれませんが、これから先貯金等に回すお金の一部を「投資」に回し、将来の資金作りを始めると良いでしょう。

住宅ローンの繰り上げ返済も大切だとお思いであれば、それとは別に繰り上げ返済用に貯めていくとよいのではないかと思います。ただ、今は住宅ローン控除期間でしょうから、控除を受けられる金額を減らしてしまうのはもったいないとも思います。ですから、無理に繰り上げ返済を頑張らなくても大丈夫です。もし、どうしても気になっているのであれば、住宅ローン控除が終わる3年後までは繰り上げ返済用にお金を貯め、終わってから繰り上げ返済するのはいかがでしょうか。

そしてその先も繰り上げ返済をしたいのであれば、やはり投資をしながら繰り上げ返済用資金を貯めていくのが良いでしょう。

金融庁のデータを見ても、投資信託の積立投資を20年継続した場合、損をする人はおらず、多くは最終的に2~6%の運用益を出せていたとされています。このようなリスク(不確実性)の少ない投資をしていけば、貯金よりも利回りがよい可能性が高いので、効率の良い貯め方と言えます。しかも利息に利息が付く複利ですから、その効果でさらにお金が増えることも期待できるのです。できるだけ長く投資をしたほうが、増え方も大きくなりますから、ぜひ始めることを考えてみてください。

まずはiDeCoかつみたてNISAで

将来に向けての投資は、まずは非課税制度を利用してみると良いでしょう。iDeCoは私的年金制度の一つなので、掛け金は全額所得控除、受取時も税優遇が受けられます。運用益は非課税です。ただ、60歳まで引き出せないという制限があり、ここに不安がある人には向きません。逆に、一度始めるとやめられないことをメリットに感じる人もいます。

つみたてNISAは税優遇のメリットはiDeCoほどありませんが、引き出しがいつでも自由であることが魅力です。1年間に投資したお金は20年非課税で運用でき、2037年まで拠出することが可能です。投資商品は金融庁の基準をクリアしたリスクの低い投資信託やETFなので、初心者でも始めやすいことがメリットです。

これ以外にも普通に課税口座で投資信託の積立をしてもよいのですが、初めてで不安という人は、こういった制度をご自分でも調べ、始めてみるとよいでしょう。

投資を面白いと感じると、掛け金を増やそうと家計にも目が行く人が多いと思います。お金を増やす、家計を絞る両面に良い作用をもたらすのです。

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