新潟駅南口大通りの上空でドローンによる物流実証実験が実施

新潟市とTOMPLA株式会社(新潟市中央区)は12日、新潟駅南口前通り上空でドローンを用いた物流実証実験を実施した。駅前ビル・プラーカ1から飛び立ったドローンは、大通り上空を横切ってプラーカ3屋上で待つ中原八一市長へパスタを届けた。人通りの多い都市部での同様の実験は日本で例が無く、新潟市は、市内でドローン配送のモデルが構築されることに期待を高める。

TOMPLAは2021年3月に新潟市中央区で創業した企業で、離着陸基地(ポート)の整備や、配達依頼に用いるアプリケーションの開発などを通して、ドローン宅配における空路設計を進めている。

TOMPLA株式会社の藤本高史代表取締役

現行の航空法では、無人地帯におけるドローンの目視外飛行(自立飛行)まで認められており、山間部や農村部では農薬散布や撮影などに用いられることも多い。一方、有人地帯においても目視飛行は認められているものの、安全面から飛行許可が下りにくく、国内の実証実験は海面上や人の少ない郊外などを主な飛行ルートに設定して行われている。

しかし、2023年6月ごろには有人地帯における目視外飛行が可能になるよう法改正が進められており、十分にドローン関連のサービスを展開するためには、現時点から都市部で実績と経験を積んでおく必要性がある。今回は地域住民や警察への周知をあらかじめ行い、車道上を通過する際には車両が止まるタイミングを計るなどの配慮を行った上での実施となった。

アプリで注文を受け取ったカフェ・オードリー店員

今回はプラーカ1を出発し、プラーカ2上空で待機後、目的地のプラーカ3にまで飛んで行った

実証実験には、プラーカ1内で営業するカフェ・オードリーとジュンク堂書店新潟店が参加。実際の運用時を想定して、TOMPLA開発のアプリで中原市長からの注文を受け取った両店の店員が、プラーカ1屋上で自ら商品をドローンへ積み込んだ。

大通りを挟んで向かい側、プラーカ3屋上で待つ中原市長の元にも間も無くプロペラ音が聞こえ始め、上空からパスタが到着した。中原市長は「風も吹いているのでしっかり届くか半信半疑だったが、(実物を見ると)もっと重いものでも運べそうに感じた。コロナ禍で人々の意識が変わる中、新しい産業が展開されるのではないかと期待があり、都心部の実験を経て、新潟市の広い郊外部にも広まっていってほしい」と期待を示す。

上空から配達された米粉パスタに舌鼓を打つ中原市長。ドローン配達には「こういう時代になったのか、という感動がある」と語った

個人宅へドローンで配達されるのはまだ未来の話になりそうだが、TOMPLAでは現在、コンビニや配達ボックスなどの集積所への配送を、ヒトからドローンへ転換していくことを目標に実証実験を重ねている。TOMPLAの藤本高史代表取締役は「車社会である新潟では特に駐車場が多いため、そうした場所をドローンのポートとして使用していきたい」と話した。

新潟市内中は特に冬場の気候が厳しいことから、実績が積み重なれば他地域や無人地帯への参入のハードルは大幅に低くなる。また、信濃川や古町商店街のアーケードの上など、落下時のリスクが低い場所を飛行するという選択肢が採れることも有人地帯飛行にとって大きなメリットだ。

新潟市としては、街中をドローンが飛行することで「畑での農薬散布など特殊な用途で用いられるもの」という住民のイメージを払拭しつつ、騒音など住民から提言される課題の抽出をしていきたいという。また、関連企業が「にいがた2km」などの地域に参入・集積していくことも狙いだ。

新潟市とTOMPLAでは次回の実験として、12月ごろに新潟市中心の商店街を舞台に歩道上空にドローンを飛行させることを計画中である。

【株式会社TOMPLA提供 上空のドローンから撮影した新潟駅周辺の映像】

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