<金口木舌>「ストーブリーグ」と就職活動

 プロスポーツにストーブリーグという言葉がある。オフシーズンに選手の所属先を話題にする際に使う。ストーブが必要な冬場に移籍関係の話題が活発化したことから、その名前が付いたとされる

▼高額な年俸を決め手に移籍する選手もいれば、いくらお金を積まれても動かない選手もいる。自身の成長や他にはない魅力がチームにあることなど、金銭面以外を重視するためだ

▼高校時代の友人は大手金融機関を退社して父親が経営する県内の中小企業に就職した。幅広い事業に挑戦する会社の姿勢に引かれたようだ。年収は減少したものの、仕事の楽しさは何倍にも膨らんだ

▼華やかな肩書と高収入を手放して沖縄に戻ったと聞いて驚いた。生き生きと仕事に打ち込む友人の表情を見て、その選択が正しかったと実感した

▼就職情報大手マイナビの調査によると、大学生は楽しく働くことや仕事と私生活の両立などを求めて就職する。コロナ禍で採用を控える企業もあり、就職活動は厳しさを増す。そんな中でも、収入面だけではなく多様な価値観に目を向けているという

▼今月から就職の面接選考が本格化した。いい人材に出会うため、自分の求める仕事に就くため、企業や学生が奔走する様子はストーブリーグのよう。両者の気持ちがかみ合い最良の職場を築ければ、その会社はどこにも負けないチームになるはずだ。

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