<社説>県財政基金97%減 実情に即した国の支援を

 相次ぐ新型コロナウイルス対策によって、県の貯金に当たる「財政調整基金」の残高が激減している。2021年度末は感染症の影響がなかった19年度末比で、約223億4千万円(97.6%)減の約5億6千万円になる見通しだ。 観光が基幹産業である沖縄は、コロナ対策による人流減が経済に大きな打撃を与え、県税収が激減した。感染症の影響が長引くほど、県財政が縮小する構図だ。人流減が財政悪化につながりやすい沖縄特有の事情も背景にある。

 人口10万人当たりの感染者数が全国一多い深刻な状況がこのまま続けば、対策費が膨らみ続ける。そうなると住民サービスの低下だけでなく、財政破綻の懸念さえ浮上しかねない。コロナ対策の現場を担っている自治体の財源が乏しければ対策もままならない。政府は沖縄の実情に即した感染防止策と財政支援をセットで強化すべきだ。

 県は昨年4月から独自を含めて4度の緊急事態宣言を出してきた。その都度、飲食店などに時短営業を要請し、協力金を支給してきた。協力金などコロナ対策費の大半は国から補助されるが、「裏負担」と呼ばれる県の自己負担も積み重なり、財政を圧迫している。

 19年度末に約229億円あった財政調整基金は、わずか1年数カ月で200億円以上を取り崩すことになった。年度末の残高が10億円を下回るのは46年ぶりという異常事態だ。機動的な財政需要に対応しきれない懸念がある。

 一方、県内市町村の財政にもコロナ禍は影響している。21年度当初予算(普通会計)を見ると、地方税が減り、自主財源が前年度比で過去10年では初めて減少に転じた。

 しかし、政府による自治体への支援は十分とは言えない。玉城デニー知事は全国知事会を通して地方創生臨時交付金の地方単独分の追加配分を政府に再三求めている苦しい状況だ。県は財政の厳しさなどを理由に独自では無理だとして出発地点でのPCR検査徹底を国に求めているが、実施の気配すらない。

 コロナ対策として財政調整基金を取り崩す都道府県は全国でも多い。こうした状況を踏まえ、総務相の諮問機関である地方財政審議会は先月、地方自治体が安定的な行政サービスを提供するには必要な一般財源総額を安定的に確保することが必要不可欠とする意見書を総務相に提出した。

 意見書は「地方自治体が財源面での心配なく感染症対策に取り組むことができるよう、国において必要な財源を確保することが重要である」と指摘している。

 これを受けた政府は9日に示した経済財政運営の指針となる「骨太方針」案で「感染収束以後、早期に地方財政の歳出構造を平時に戻す」と明記した。それを確実かつ迅速に実行してほしい。地方自治体の財政運営に支障が生じないよう万全の措置を講ずることは、国の当然の責務だ。

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