「府中焼」というお好み焼や、お好み焼に入れる「辛麺」などを知っていますか?
府中焼は広島県東部・府中市で愛されているご当地お好み焼です。
辛麺は、広島県東部などでお好み焼に入れたりするピリ辛風味の中華麺。
倉敷市内にお好み焼店・鉄板焼店はたくさんありますが、府中焼や辛麺が食べられる店は少ないですよね。
でも美観地区の近くには、府中焼や辛麺を食べられる店があるんです!
それが「まりんどーる」。
広島お好み焼と鉄板焼の店です。
さらにまりんどーるでは、美星町(井原市)のブランド豚・牛の「美星豚」「美星牛」にこだわっています。
まりんどーるのお好み焼や鉄板焼の魅力・こだわりについて、深掘りしていきましょう。
まりんどーるは店主との会話も弾む広島お好み焼・鉄板焼の店
まりんどーるは、倉敷市の白壁通り沿いにあるお好み焼・鉄板焼の店です。
倉敷美観地区の西のあたりで、倉敷市立美術館の西側にあたります。
ちょうど倉敷薄荷陳列所の2軒東です。
まりんどーるは全8〜9席ほどで、店主の藤原 浩(ふじわら ひろし)さんが一人で切り盛りしています。
こぢんまりした店ですが、気さくな藤原店主との会話もまりんどーるの魅力です。
カウンター席は、鉄板から直にお好み焼を楽しめます。
テーブル席では、お好み焼は鉄皿での提供です。
店主は生粋の海好きということで、店内外には海をイメージする装飾がたくさん。
お好み焼店の醍醐味である、目の前で調理するライブ感を楽しめるのも、まりんどーるのポイントです。
広島お好み焼から鉄板焼・一品料理まで楽しめるメニュー
価格は消費税込。 2021年(令和3年)5月時点の情報
まりんどーるのメニューは、大きく「お好み焼・焼そば」「鉄板焼・一品料理」「ドリンク」の3系統に分かれます。
お好み焼は、いわゆる広島お好み焼です。
定番の豚肉・玉子・中華麺入り(いわゆる豚玉そば)を基本に、トッピングの違いで数種類あります。
また広島県府中市の名物お好み焼「備後府中焼」もあり、人気です。
倉敷で府中焼が食べられる店は希少ではないでしょうか。
焼そばはソース味と塩味が選べます。
トッピングもたくさん。
イカ天(イカの姿揚げ)や大葉(青ジソ)などが人気だそう。
なかでも注目のトッピングは、辛麺。
倉敷で辛麺入りのお好み焼が食べられるのはめずらしく、まりんどーるの売りのひとつです。
なお焼そばでも、辛麺への変更ができます。
また鉄板焼・一品料理は、レギュラーメニューと店内のブラックボードに書かれた不定期に内容が変わるものがあるのです。
お酒のツマミに最適な、おいしそうなメニューが並びます。
「ネギ焼」や「とんぺい焼」も気になるところ。
「美星牛のミスジ」や「美星牛の切り落とし」「牛タン」の鉄板焼などもおいしそう。
ブラックボードに書かれた内容は、日によって変わるので注目です。
なおフードメニューの多くは、持ち帰りもできます。
ただし持ち帰りの場合は、容器代としてプラス30円が必要です。
卓上には、オタフクのソース、コショウ、ガーリックパウダーなどがありました。
そして注目は、オタフク製「レッド・ファイアー・ソース」。
名前も見た目も辛そうなソースですが、ただ辛いだけではなく、野菜や果実のさわやかなうま味も感じる奥深い味です。
やみつきになって、毎回お好み焼にかけるファンもいるそう。
このほか調味料は、マヨネーズや一味・七味トウガラシなどもありました。
またお好み焼用ソースはオタフクソースをベースに、少しアレンジを加えているそうです。
まりんどーるのおすすめメニュー
たくさんあるまりんどーるのメニューのなかから、おすすめのものを紹介していきましょう。
「備後府中焼」はミンチ肉とパリパリの麺がポイント
取材時(2021年5月)で、お店のイチオシのメニューが「備後府中焼」(770円)。
2021年4月に登場したばかりの新メニューです。
店主の藤原さんが3か月以上を費やし、理想の味を追求しました。
府中焼は広島県府中市の名物で、マスメディアにも取り上げられた注目のメニューです。
府中焼は広島のお好み焼と同じく「重ね焼き(載せ焼き)」の焼きかたですが、基本の具材が少し異なります。
広島のお好み焼では、メイン野菜はキャベツとモヤシを使いますが、府中焼のメイン野菜はキャベツです。
また肉はミンチ肉を使用します。
ミンチから染み出る脂で、独特のコクが生まれるのです。
名物・備後府中焼を注文してみます。
麺を人気の辛麺に変更(プラス50円)してみました。
鉄板に生地が丸く薄く敷かれ、キャベツや天カスなどが載せられ、ついに府中焼のポイントであるミンチ肉が投下されました。
府中焼をヘラで切り分け、すくって食べます。
まずパリパリッと軽快な麺の食感とともに、香ばしさがあふれ出しました。
辛麺ですがそこまで辛いわけではなく、香ばしい風味のあとに、少しだけピリッとした辛みが顔をのぞかせます。
パリパリ感と香ばしさに、少しのピリ辛感。
これはクセになる味わいです。
そしてシンナリとしたキャベツの柔らかな舌触りと甘味に、ミンチ肉のうま味も感じます。
そこにソースの甘い味わいが絡んできて、食欲がそそられました。
辛麺に変更して頼みましたが、次は極細麺を使う通常の府中焼を頼んでみたいと思います。
「まりん焼」は大葉・イカ天入りで、炙りチーズがクセに!
備後府中焼とならぶまりんどーるの看板メニューだという「まりん焼」(1,100円)。
辛麺変更で注文しました。
まず基本となる「定番(豚玉そば)」に、イカ天と大葉を追加。
さらにお好み焼の上からチーズをかけ、ガスバーナーを一気に噴射!
最後にネギを振りかけて完成です。
食べる前からチーズの香ばしさがただよってきます。
ヘラで切断して食べると、キャベツのシンナリとした食感と甘さ、モヤシのシンナリとした食感、肉の風味などが一体となって味わえます。
肉の存在感もシッカリと感じました。
そこへ大葉の香りやイカ天のシナッとした食感と風味が、ときどき出現。
さらに辛麺はところどころパリッとしていて香ばしく、適度なピリ辛感が味わいを引き締めます。
上に載っているネギのシャキシャキ感と風味と、炙られたチーズの香ばしさが口いっぱいに広がり、チーズのまろやかな味わいも加わって、なんともいえないおいしさです。
「巣ごもりネギまみれ」はタップリのネギに生卵を載せる
まりん焼とともに見た目のインパクト抜群なのが「巣ごもりネギまみれ」(930円)です。
「定番(豚玉そば)」の上に多量のネギがかかり、中央に卵黄が落としてあります。
巣ごもりネギまみれは、まりんどーるのオリジナリティーのあるお好み焼といえるのではないでしょうか。
ネギのシャキシャキとした食感に風味、卵黄のトロリとした舌触りと濃厚でまろやかな味わいが加わり、独特の味わいになります。
さらにネギ・卵黄とソースの甘みとがよいバランスで、よい具合にお好み焼においしさが加わりました。
「牛スジ煮込み」は不定期登場ながら人気のサイドメニュー
「牛スジ煮込み」(550円)は、鉄板焼・一品料理などのなかでも人気のあるメニューです。
煮込みに時間がかかるので毎日あるわけではなく、不定期に登場します。
それにもかかわらず、メニューにあるときは多くのお客さんが注文するほどの人気なのです。
牛スジ煮込みは牛スジ肉のほか、ダイコン・ニンジン・コンニャクが入っています。
どれも一切れが大ぶりにカットされているので、食べごたえ抜群です。
しかも箸でスッと切断できるほど柔らかく煮込んでおり、甘辛い味がシッカリとしみ込んでいます。
牛スジの脂身部分はトロットロ。
そして脂身の甘い味わいが口の中に広がります。
また牛スジの赤身部分はホロホロで、うまみがタップリ。
甘辛い味わいもシッカリと楽しめました。
広島お好み焼や府中焼、さらにさまざまな鉄板焼・一品料理まで楽しめる、まりんどーる。
店主の藤原浩(ふじわら ひろし)さんにインタビューをしました。
まりんどーるの店主・藤原 浩さんへインタビュー
広島お好み焼や府中焼、さらにさまざまな鉄板焼・一品料理まで楽しめる、まりんどーる。
店主の藤原浩(ふじわら ひろし)さんに開業の経緯や店のこだわり、今後の展望などの話を聞きました。
定年退職後の第二の人生としてお好み焼店を開業
──開業の経緯を教えてほしい。
藤原(敬称略)──
もともと私は、福山で消防士として働いていました。
定年退職を迎え、第二の人生として選んだのが、故郷・倉敷でのお好み焼店の開業です。
消防士として働いていたとき、いろいろな飲食店に行きました。
また昔飲食店でアルバイトをしていて調理経験がありましたし、その後も料理はよくつくっていたので、退職後は飲食店を開こうと決めたんです。
飲食店のなかでも、とくに行っていたのがお好み焼・鉄板焼の店。
広島お好み焼はよく食べました。
そこで、店をするなら広島お好み焼や鉄板焼を楽しめる店がいいなと思ったんです。
──どこでお好み焼の修業をした?
藤原──
実は、お店で働いての修業はしていないんですよ。
オタフクソースが開催する、お好み焼店の開業研修を受けました。
その後は、さまざまなお好み焼店を調査・食べ歩きし、気になるものは自分でつくって再現して練習しました。
それの繰り返しです。
そして運良く倉敷の実家近くに空き店舗を見つけ、開業したんです。
開業は、2019年(令和元年)11月22日でした。
──店名の由来は?
藤原──
私は、昔から海が大好きでして。
若いときは、船の機関士の仕事もしていました。
なので「まりん(marine)」は、それに由来しています。
「どーる(doll)」は、昔「ドール」を名前に付けた店が多かった時期があったんです。
それにあやかって「どーる」を付けました。
お好み焼店らしくない名前が、逆にいいと思います(笑)。
こだわりは美星豚や美星牛。身近なおいしい肉を
──店や商品のこだわり・売りは?
藤原──
一番は、やっぱりお肉ですね!
当店は、牛スジなど一部をのぞいて井原市の美星産の「美星豚」「美星牛」を使っています!
いろいろ肉を食べてみて、美星豚・牛がおいしいなと思ったんです。
しかも、倉敷のすぐ近くの地域で生産されている肉です。
身近な地域においしい肉があるのだから、ぜひ食べてほしいと思いました。
もうひとつの売りは、お好み焼の種類です。
広島お好み焼を大々的に看板にしている店は、倉敷ではまだ少なめ。
しかも当店では、広島県府中市の名物「府中焼」も食べられます。
いまのところ倉敷で府中焼を出す店はかなり少ないので、府中焼は当店の名物ですね。
実はオープン当初、府中焼は出していませんでした。
2021年(令和3年)4月に登場したんです。
テレビで府中焼が放映されて話題になったのと、私がかつて府中で働いていた経験もあって府中焼が身近だったのでメニューに取り入れました。
ただ府中焼といっても、店によって千差万別。
いろいろ府中焼を食べ、自分の理想の府中焼を開発するまで3か月くらいかかりました。
メニューに登場後、お客様から府中焼は大変人気ですよ。
売りの3つめは「辛麺」です。
これも倉敷では出している店が少なく、めずらしいですね。
当店の麺はすべて、広島市内の升萬(マスマン)製麺さんのを使っているのですが、辛麺も升萬さんのです。
ちょっとだけピリッと辛く、これがクセになるお客様も多いですよ。
辛さが足りないときは、ぜひ卓上のオタフク「レッド・ファイアー・ソース」をかけてみてください。
メニューにない要望など柔軟に対応
──店を運営していくうえで、気をつけていることは?
藤原──
衛生面には気をつけています。
とくに整理整頓は、シッカリとおこなうようにしていますね。
あとは、もしお客様からメニューにない要望があった場合、可能な限りそれに応えるように柔軟な対応を心がけています。
当店は観光地の美観地区のすぐそばにありますが、店のコンセプトは地元のかたにお好み焼や鉄板焼を楽しんでいただくような、地域に根差した店です。
実は当店のまわりには年配のかたも多くおられ、来店されることもしばしば。
だから、あまり量はいらないので麺を半分にしてほしいとか、麺なしでつくってほしいとかの要望があったりするんです。
また昼には、近隣で働いているかたが来ることもあります。
そして、野菜を多くしてほしいという声もあったり。
そういった要望には、柔軟に応えていますよ。
お好み焼教室など地元密着のサービスもしてみたい
──今後の展望ややってみたいことがあれば、知りたい。
藤原──
さきほど話したように、当店は観光客向けというより地元のかた向けの地域密着の店がコンセプトです。
なので、地元のかたに喜んでもらえるようなサービスをしたいですね。
たとえば店を貸切にして、家族向けのお好み焼教室をすることを考えています。
そこでお父さんやお母さんが私からお好み焼を習い、鉄板を使って子供にお好み焼をつくって振る舞うんです。
家でお好み焼をつくるとホットプレートになりますが、やっぱり狭くてつくりにくいし、火力も弱いですよね。
業務用の鉄板を使って、ダイナミックに本格的なお好み焼をつくれば、子供たちも喜ぶし、親御さんも楽しいのではないでしょうか。
気さくな店主との会話が弾むまりんどーる
府中焼やまりん焼、トッピングの辛麺をはじめ、いろいろな広島お好み焼・鉄板焼が楽しめるまりんどーる。
地元のおいしい肉・美星豚や美星牛もポイントです。
さらに店主の藤原さんの気さくな人柄も、まりんどーるの魅力ではないでしょうか。
地域に根差したお好み焼・鉄板焼の店・まりんどーるで、おいしいお好み焼と店主との会話をぜひ味わってみてください。